2020年の予想レンジ

・トルコリラ/円=15~20円
・メキシコペソ/円=5.4~6円
・南アランド/円=7.2~8円

新興国通貨、高金利通貨は基本的にリスク資産に位置付けられる。私は、来年にかけてリスクオン、場合によっては「究極のリスクオン」、バブルが展開する可能性もあると考えている。そうであれば、新興国通貨や高金利通貨も選好される展開を予想する

トルコリラ/円

トルコリラ/円は、5年MA(移動平均線)からのかい離率でみると記録的な「下がり過ぎ」圏にあり、その上で2018年には、過去3ヶ月の平均、90日MAも3割以上下回る「暴落」となった(図表1参照)。

【図表1】トルコリラ/円の90日MAからのかい離率(2000~2019年)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

90日MAからのかい離率がマイナス30%以上に拡大したのは2000年以降では、2001年、2008年に続きこの2018年が3度目だった。このうち、2001年は、翌年もかい離率がマイナス20%以上に再拡大したものの、2008年の場合はまさに10年後の2018年まで、かい離率はマイナス15%以上にすら拡大することはなかった。

以上のように見ると、90日MAからのかい離率がマイナス30%以上に拡大するといった「10年に一度の暴落」が起こった後は、その後数年は90日MAを大きく下回る短期的な「下がり過ぎ」拡大にも自ずと限度がある状況が続く可能性が高そうだ

足元のトルコリラ/円90日MAは18.8円程度だが、これが2020年中に18円まで下落したとしても、それを15%下回る水準は15円台という計算になる。以上のように見ると、2020年も短期的な「下がり過ぎ」に限度のある状況が続くとするなら、トルコリラ/円は終値ベースで15円を割れる可能性は低いと考えられる。

さて、トルコリラ/円の2020年の下値メドを15円とすると、上値はどう考えたら良いか。過去5年間のトルコリラ/円の年間変動率(高値/安値)は、2018年の異常値(95.7%)を除くと18~34%(図表2参照)。

これを参考にすると、トルコリラ/円は、ボラティリティー(変動率)が低い「低ボラ」なら年間変動率は20%程度、「高ボラ」なら30%程度が基本と考えられる。

【図表2】
出所:マネックス証券のヒストリカルデータをもとに作成

変動率を30%とすると、2020年の安値が15円なら、高値は20円程度といった計算になるわけだ。

メキシコペソ/円

次はメキシコペソ/円の2020年の予想レンジを考えてみたい。メキシコペソも、代表的な高金利通貨だ。すでに述べたように、私は、来年にかけてリスクオンが展開すると考えているので、メキシコペソ/円も上昇トレンドが展開すると予想している

経験的には、上昇トレンドが展開する場合は、52週MAを5%以上といった具合に大きく上回る可能性が高く、一方でトレンドと逆の一時的な下落は、52週MAを5%以上といった具合に「大きく」、1カ月以上といった具合に「長く」割り込まない程度にとどまる可能性が高い。

さて、メキシコペソ/円の52週MAは足元で5.66円なので、以上を当てはめると、一時的な下落でも5.4円前後がせいぜいで、6円を目指す上昇トレンドが展開する可能性が高いといった計算になる(図表3参照)。

【図表3】メキシコペソ/円と52週MA(2001~2019年)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

また、経験的には高金利通貨、新興国通貨は、基本的に5年MA前後が中長期的な割高警戒域といえる。足元のメキシコペソ/円の5年MAは6.3円程度なので、以上を参考にすると、6円を超えるようならメキシコペソ割高を警戒する必要が出てくるのではないか。

南アランド/円

メキシコペソ/円で確認した考え方を南アランド/円にも当てはめると、南アランド/円は52週MAが7.56円程度、5年MAが8.3円程度なので、来年にかけては下がっても7.2円前後がせいぜいで、8円を目指す可能性が高いものの、8円を上回るようなら南アランドの割高への警戒を強める必要が出るのではないか(図表4参照)。

【図表4】南アフリカランド/円と52週MA(2000~2019年)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成