今年のトルコリラ/円はこれまでのところ16円も割れず、また日足終値ベースでは18円を下回ったことすらごく短期間にとどまっている(図表1参照)。昨年まで4年間の大幅な下落から打って変わって底固い展開が続いている理由は何か。
1つには、さすがに4年以上もの長期下落トレンドが続いた結果、中長期的な割安懸念が強まったことがあるだろう。トルコリラ/円の5年MA(移動平均線)からのかい離率は、経験的にマイナス30%~0%中心に推移してきたが、2018年には一時マイナス50%以上に拡大、足元でもマイナス40%程度で推移している(図表2参照)。
たとえば、トルコリラ/円は2011年にも循環的に底打ち、反発に転じたことがあったが、その当時の5年MAからのかい離率はマイナス40%程度だった。その意味では、昨年以降は記録的な割安だったことがわかるだろう。
記録的なトルコリラの割安が昨年以降も一段と拡大したのは、悪材料が相次いだことの影響があっただろう。不穏な中東情勢に伴う地政学的リスク、国内のインフレ、にもかかわらず大統領が金融政策に介入することで中央銀行の信認の揺らぎ。
こういったトルコリラを巡る悪材料は、今年に入ってから変わったかといえば必ずしもそうではない。ではなぜ、悪材料が残る中でも、これまで見てきたようにトルコリラは今年、底固い推移となったのか。
数多くの悪材料がきっかけとなり、トルコリラは暴落、急落を繰り返し、中長期的な割安圏の中で、さらに短期的にも「下がり過ぎ」となった。昨年8月のトルコリラ/円の暴落局面では、90日MAからのかい離率はマイナス30%以上に拡大した(図表3参照)。
このように同かい離率がマイナス30%以上に拡大したのは、2000年以降では3回しかなかった。さらにかい離率のマイナス15%以上の拡大も、5~6回しかなかった。以上のように見ると、昨年8月のトルコリラの暴落は、「10年に一度の暴落」であり、昨年それが起こったばかりで、すぐに90日MAを15%以上といった具合に大きく下回る可能性は、経験的には低いだろう。
足元の90日MAは19円弱なので、それを15%下回ると16円という計算になる。今年、ザラ場でも16円を割れず、日足終値では18円を下回ったのも短期間にとどまるといった具合にトルコリラが下げ渋る展開となったのは、以上のように見ると、中長期、短期ともに「下がり過ぎ」となった影響が大きかったのではないか。