ここ数年で、地震、台風などの自然災害による被害が増えています。そのため特に日本では、少しずつキャッシュレス決済が普及し始めていることもあり、「停電時の備え方」も課題になっていると感じます。

消費税増税に伴い導入された「キャッシュレス・ポイント還元事業」により、キャッシュレス決済が以前よりも注目されています。災害時、キャッシュレス決済はどうなってしまうのでしょうか。今回のコラムでは私たちはこの「災害」にどのように対策したらよいのかを考えます。

停電時は店側もキャッシュレス決済ができない

地震や台風などによる自然災害の時、使えなくなって困るのは電気と水道です。他にもないと困るものはたくさんありますが、便利な暮らしに慣れている私たちには、この2つが大きく影響します。

特に電気は、照明に必要なだけではなく、暮らしに必要なものを動かすために必要です。記憶に新しい千葉県の台風被害では、家屋の被害だけではなく、電気が通じていないことで冷蔵庫の食材がダメになるなどの被害も、大きく報道されていました。

電気がないことで困るもののひとつに、「通信機器」があります。スマートフォンや携帯電話は今では単なる連絡ツールだけではなく、情報収集や支払いの手段ともなっています。その通信機器が使えないことは、とても不便を感じるでしょうし、かなりの不安をもたらします。

中でもその支払い手段をスマートフォンにゆだねている人は、災害時に困ることも多いようです。消費税増税と共にキャッシュレス決済が注目されましたが、私たちの周りではクレジットカードや電子マネーといった従来のキャッシュレス決済方法だけではなく、スマートフォンによる決済を利用する人が増えています。

そして、それらにはクレジットカードを紐づけたりして利用するので、使えなくなると致命的となるでしょう。まだ利用していないという人も多いかもしれませんが、これから徐々に増えてくるとすると、自衛する意識が大切になります。

なぜなら、長期停電という事態になった時に、自分側だけではなく、お店側にも電気が通じていないと決済ができなくなるからです。

2018年9月の北海道地震で停電した時は、札幌市に本社を置くコンビニ「セイコーマート」が独自の災害対策として停電時は自動車から電気をとることをマニュアル化していたため、停電時も電気が使えたという話があります。しかしながら、キャッシュレス決済は利用できなかったそうです。

災害時に家族が1週間暮らせる「現金の備え」を

これからキャッシュレス決済を多く使おうと思っている人、今までもキャッシュレス決済を多く使ってきて災害などの経験はないという人も、万が一の時に備え、準備をしておいて欲しいことがあります。それは現金を備えておくことです。

現金は、災害にあった時に家族が1週間前後暮らしていけるよう、必要だと思う金額を手元に置いておきましょう。夫婦と子ども2人であれば、10万円ほどあれば十分です。お札だけではなく、100円、10円といった小銭も用意しておきましょう。災害袋に入れておくのでもよいですし、普段のお財布に災害用の予備を入れておくことでもよいでしょう。

災害時は買い物ができたとしても、主に現金払いとなります。おつりが出るようであれば売ってもらえないということもあるようです。おつりがなく買い物できる準備をしておくことが必要です。

「キャッシュレス残高の備え」で停電解消時にATMに並ばずに済む

そして、できれば停電が解消した時にキャッシュレス決済のツールが使えるよう、チャージが必要であればチャージをして残高不足にならないようにしておくことも大切です。

なぜなら、停電が解消した直後は、ATMに長蛇の列ができます。長い期間お金を引き出せない状況が続き、みんな現金不足になっているのです。そういったときに列に並ばず、スムーズに買い物ができるのは、キャッシュレス決済の良いところだと思います。

そうであればもっと多額の現金を準備しておくとよいのではと思われがちですが、それもよくありません。水害や火災で流されたり燃えたりしてしまう可能性があるからです。また、災害時は盗難も多発するので、その被害にあうかもしれません。

ですから、必要最低限の現金だけを準備し、あとは電気が復旧してから使えるよう、キャッシュレス決済ができる準備をしておくとよいのです。

キャッシュレス決済、特にスマホアプリは機器が壊れてもIDとパスワードが分かれば、違う機械から復旧させることができます。カードが必要なものは壊れたり無くしてしまうと紛失届が必要であったり、再発行の手続きが必要で、郵送されるまで時間がかかるということもあるでしょう。

スマホアプリであれば、そういった時間の問題も少なく済むでしょう。また、盗難などで不正利用されても、現金のように手元に戻ってこないことはなく、保障がされることがメリットです。

現金もキャッシュレスも一長一短

日本ではまだ、キャッシュレス決済に対応していないお店・施設がたくさんあります。ですから、普段から現金も持ち歩いているという人は多いと思います。それと同じように、災害対策として現金もキャッシュレス決済も持ち合わせていることが得策だと思います。

もしかすると、電波がつながっていれば、スマホでするスキャン型のキャッシュレス決済は早いうちから利用できるでしょう。

現状で言えることは、「完全現金主義」「完全キャッシュレス」など、偏った考え方をしないことです。どちらもある程度ほどほどに取り入れていれば、あえて備えなくても良いかもしれません。

技術が進歩すれば、災害時も問題なくキャッシュレスが使える、そういう時代が来るのかもしれません。ですが、そこに及ばない今、自分の住む地域に合った配分で、現金とキャッシュレス決済を備えておくことが良いのではないでしょうか。