高値圏に達しているが、J-REIT価格の上昇余地はありそう
J-REIT価格の上昇が止まらない状態になっている。
東証REIT指数は、9月25日に2007年7月以来となる2,150ポイントを超えた。指数として見れば単なる一里塚でしかないが、利回り面から見れば、東証REIT指数が2,150ポイントとなったことで加重平均利回りが3.5%を切る水準に近づいたため(9月25日の利回りは3.53%)大きな節目とも考えられる。
利回り面から見れば次は3.0%が分かりやすい節目となるが、この水準まで利回りが低下すると、単純計算では東証REIT指数は2,500ポイントを超える水準となる。したがって価格面でも利回り面で見ても次の節目となる水準は、東証REIT指数で2,500ポイントということになる。
東証REIT指数が2,500ポイントを超えていた時期は、これまで2007年4月末から6月上旬にかけての26営業日しかない。この時期は、後にファンドバブルと呼ばれるようになった時期の最終局面であった。筆者は、2007年3月頃に価格上昇の勢いが急速であったことから経済誌に「休むも相場」という内容の原稿を記載したことがあった。
高い利回りを背景にした長期投資は難しい状況に
既に東証REIT指数は2007年3月頃と同水準に達しているが、前回のコラム「J-REIT価格が上昇を続ける理由」で記載した通り当面の価格上昇余地はあると見ている。
2019年は2007年とは異なり緩やかな価格上昇であることに加え、各国が金融緩和を続ける可能性が高いためだ。
特に2019年のJ-REIT価格の上昇は米国の金利低下との関連が強いことから、J-REIT価格に変調をもたらす最大の要素は米国金利の反発であるが、来年の米国大統領戦が本格化するまでは米国金利は低位で推移すると考えられるのがその背景だ。
したがって2007年3月頃とは異なり、J-REIT投資を行うことは現在でも可能な状況だ。ただし、J-REIT市場で最大の時価総額である日本ビルファンド投資法人(証券コード8951)は、昨年末比で20%近い価格上昇となり利回りは2.6%程度まで低下している。
その他にも利回りが3.0%以下になるまで価格が上昇している銘柄が4銘柄存在するなど、J-REIT投資としては重要な高い利回りを背景にした長期投資は難しい状況になっている。
上場63銘柄の単純平均利回りは4.0%程度となっていることを含めて考慮すると、3.5%以下まで利回りが低くなっている銘柄への投資では、売却価格を設定した短期投資と割り切る必要がありそうだ。
利回りが高い銘柄への投資は売却益の影響を確認するべき
一方で利回りが5.0%を超える銘柄は、25日時点でも9銘柄存在している。投資家としては高い利回りが魅力的に見えるが、利回りが高い銘柄への投資で最も注意すべき点として売却益によって分配金が大幅に増加している銘柄が多いことが挙げられる。
例えば、いちごホテルリート投資法人(証券コード3463、以下いちごホテル)は9月25日時点で利回りが6.0%と上場63銘柄の中も最も高くなっている。ただし、いちごホテルの当期(2020年1月期)の分配金は、物件売却益によって高い水準になっている。
具体的には、当期の予想分配金は4,700円であるが次期(2020年7月期)は3,001円としている。当期分配金に対する売却益の寄与は1,500円を超えている(※1)ため、売却益が存在しなかった場合の利回りは4.7%程度(※2)になる。
したがって、今後も当期と同様の売却益が発生しないと、6.0%の利回りは確保できないことになる。比較的高い利回りの銘柄では同様に売却益が分配金を一時的に増加させていることも多いため、投資にあっては売却益がどの程度分配金に影響を与えているかを確認することが重要と考えられる。
なお単に売却益が発生していても分配金を大幅に増加させていない銘柄も存在する点には留意が必要だ。
例えばジャパンリアルエステイト投資法人(証券コード8952)は、当期(2019年9月期)と次期(2020年3月期)に売却益を計上するが、税制特例を活用して売却益を内部留保するとしている。このように売却益の存在だけでなく、売却益が分配金に与える影響を考慮する必要がある。
※1:いちごホテルリート投資法人 2019年8月27日付「資産譲渡のお知らせ(ホテルビスタプレミオ京都)」に記載の売却による当期純利益増加額約396百万円を発行済口数254,974口で換算すると1口当たり約1,553円
※2:上記1の売却益控除後の当期分配金3,147円(4,700円-1,553円)と次期分配金3,001円の合計6,147円を25日の終値128,400円で除して算出