確定している事項

前回のコラムでお伝えした通り、今回もさくら総合リート投資法人(証券コード3473、以下、さくらREIT)の合併(以下、本合併)に関して留意すべき点を記載する。現時点で明確になっている点は以下の通り3点ある。

(1)さくらREITと投資法人みらい(証券コード3476、以下、みらいREIT)は8月5日に合併契約を締結している。合併条件の概要は、みらいREITとさくらREITの合併比率を1:1.67とし11月1日にみらいREITを存続投資法人とするもの。

(2)さくらREITの執行役員及び資産運用会社を変更するための投資主総会が、8月30日に開催される。

(3)上記(1)の合併を承認するための投資主総会が8月30日に開催される。

前回のコラム公開後にも、さくらREIT側及び本合併の端緒となったスターアジア不動産投資法人(証券コード3468、以下、スターアジアREIT)のスポンサーであるスターアジアグループ(以下、SAG)側は様々な開示資料を投資家に示している。

ただし、両社側ともに、「一定の条件で物件を取得したら、巡航分配金(※1)は相手側提案を上回る」というものであり、この点は際限がないため、本稿ではその是非については記載しない。

また、重要な点としてSAG側の招集で開催される上記(2)の投資主総会は、SAG側の主張によれば、さくらREIT側から提案されている運用体制をみらいREIT側とする議案は不適法であり、SAG側の招集通知には記載しないとしている。

この点について、さくらREIT側は、投資主の利益保護と投資主総会が公正に行われるよう法的措置を含めその対応について検討している、としている。

現時点で(2)の投資主総会議案がどのようになるかは不明であるが、仮にSAG側の主張が通るとすれば、みなし賛成制度が適用されることになる。

みなし賛成制度とは、賛否を明らかにしない投資主は賛成とみなすという制度である。従って、SAG側の提案に反対する投資主は議決権を行使し、反対の意思表明を明確にする必要がある点には留意すべきと考えられる。

投資家が重視すべきと考えられる点

5年以上の長期投資を考慮するなら

まず、5年以上の長期投資を考慮するのであれば、さくらREIT側が提案するみらいREITとの合併の方に優位性があると考えられる。最大の要因は、不動産市況の悪化や金利が上昇する局面では、スポンサーの信用力がREITにも影響するためだ。

現時点でもみらいREITの借入金の調達コストはスターアジアREITより低い状態になっている。例えば期間5年の固定金利での借入金の調達コストは、みらいREITの場合は2018年11月1日調達分で0.32%となっているが、スターアジアREITでは2018年9月6日調達分で0.812%となっている。

スターアジアREITでは10年国債利回りがマイナスに転じた2019年4月22日調達でも0.7315%となっている点で比較すれば、みらいREITの金融機関に対する信用力は高いと言えるだろう。

比較的短期間での投資を検討しているなら

次に、比較的短期間での投資を検討している投資家であれば、みらいREITが合併後に「AA格」相当に格付けが向上する確度を考慮するべきであろう。

AA格相当の格付けがある銘柄で最も利回りが高いフロンティア不動産投資法人(証券コード8964)の利回りは、8月21日時点で4.61%となっている。みらいREITの合併後の分配金をベース(※2)にすると、仮に4.6%まで利回りが低下すれば価格は66,600円以上になる。8月21日の終値57,600円と比較すると9,000円程度価格が上昇することになる。

前述の通り、さくらREIT側、SAG側は合併後の分配金比較を行っている資料を開示しているが分配金の差異は少ない。従って、みらいREITが合併後にAA格相当になり価格が上昇(利回りは低下)すると考える投資家であれば、さくらREIT側が提案するみらいREITとの合併の方に優位性があると考えられる。

長期投資を考慮しないなら

一方で長期投資は考慮せず、みらいREITと合併してもAA格相当にはならない、またはAA格相当になったとしても価格が上昇しないと考える投資家であれば、SAG側の提案に優位性があると考えられる

SAG側の提案によれば、さくらREITが保有する物件を具体的な金額を明示した上でスポンサーが購入する意思があることを示している。スターアジアREITと合併すれば短期的には分配金の大幅な増加も期待できそうだ。


(※1)物件売却損益など、一時的な増減要因を排除した分配金水準を指す
(※2)みらいREITが開示している合併後の分配金から売却益などの一時的な分配金増加要因としているさくらREIT投資主換算の288円を合併比率で除した172円を減算した年間3,068円