中国財務省によると、2010年1~9月、中国の個人所得税の収入は前年同期比21.5%増の3716.5億元にまで拡大しました。10月の個人所得税の成長率はさらに22.4%にまで上昇。個人所得税の拡大は国民収入の拡大をそのまま反映しています。また、中国国家統計局によると、2010年1~9月、中国のCPI(消費者物価指数)伸び率は前年同期比2.9%増となっています。10月にはさらに伸び率が加速し、9月の3.6%増から4.4%増にまで上昇し、25ヶ月の高値を更新しています。この10月のCPI4.4%という数値は2008年9月時点のインフレとほぼ近いもので、物価の上昇水準が容認できないレベルに入りつつあることを示しています。このような中で中国は一旦自国の経済を冷やし、国際圧力をかわしながら物価を抑制することを目指すでしょう。これが現在の中国株の株価を押さえつける原因となっています。
しかしその一方で、個人収入の拡大とインフレの高まりで、中国の小売売上高が加速的に拡大しています。2010年1~9月、中国の小売総額は前年同期比18.3%増の11.1兆元。そして10月の小売総額は同19.1%増で、9月の成長率よりさらに0.3ポイント上昇しています。消費の拡大で、百貨店とスーパーチェーン経営の上場企業の業績も好調に拡大しています。たとえば、百貨店の金鷹商貿(3308)。2010年上半期の売上は前年同期比32.3%増の11.5億元、純利益は514%増の4.6億元。既存店舗の売上が同25.4%拡大しているほか、新規店舗の建設と買収も継続的に行っています。ちなみに、同社は現在、中国13都市で19店のデパートを持っていますが、今後2~3年間、傘下店舗を20都市の30店にまで拡大する計画です。また、スーパー銘柄を見ると、北京でスーパーチェーンを経営する京客隆(0814)は1~9月の売上は前年同期比9%増の54.5億元、純利益は同24%増の1.4億元。第3四半期の売上と純利益はそれぞれ13%増と30%増となっています。そして、北京、天津、浙江で事業スーパーチェーン経営を手がける物美商業(8277)の業績も順調に拡大中。2010年1~9月の売上は前年同期比19%増の104億元、純利益は同20%増の4億元。そのうち、第3四半期の売上と純利益はそれぞれ22%増と21%増です。
好調な市場拡大を利用して業容を拡大する企業もあります。中国百貨店大手の銀泰百貨(1833)は電子商取引サイト、銀泰網(yintai.com)の運営を開始しました。銀泰百貨は中国本土で30の百貨店を保有する大手百貨店グループで、たくさんの商品サプライヤーとよい協力関係を持っています。銀泰百貨は協力関係のある企業のブランド・商品を銀泰網に誘致し、取り扱いブランド数を400弱まで拡大。ヴィクトリアズシークレット、カルバン・クラインなどの大手ブランドのオンライン販売は中国電子商取引サイトとしては初の取り扱いとなっています。百貨店は企業サプライヤーと消費者の両方につながりがあるため、電子商取引においても優位性があります。たとえば、米国の電子商取引サイトのトップ10社のうち6社は伝統的な百貨店の傘下企業です。しかし、中国では、伝統的な百貨店により経営されている大手電子商取引サイトは1つもありません。銀泰百貨は百貨店としての優位性を活かし、銀泰網の規模を大きく拡大する計画です。具体的には、取り扱いブランド数を2010年末に600、2011年には2000ブランドにまで増加させる計画です。そして、現時点の登録ユーザー数は15万人ですが、2011年末には500~800万人にまで拡大させる計画です。経営陣によると、銀泰網の売上は今後1年半の間に10億元にまで拡大し、今後3年間の年間売上成長率は100%に達すると予測しています。
スーパー、百貨店銘柄にはこのほかにも中国最大手スーパーである聯華スーパー(0980)、マレーシア資本の百貨店で香港に上場している百貨店としては最大手の百盛商業集団(3368)、主に深センで百貨店を運営する茂業国際(0848)などがあります。中国の消費市場拡大の波に乗って業績拡大が狙えるため、今後とも注目していきたいセクターです。