中国では、物価上昇が話題となっています。一つの現象として、深センの羅湖口岸(深センと香港の間に位置する出入国検査場)では、荷物をいっぱい抱えて香港から戻ってきた深センの人が買っているのが、昔はブランド服、化粧品などの免税商品でしたが、現在は醤油、卵などの一般生活用品となっています。昔は、中国本土の物価水準が比較的低かったので、香港人は近くの深センに生活用品を買いに行くのが普通でした。現在は、深センの物価は香港と逆転しているため、深センの人が香港に出かける買出しブームが起きている模様です。 インフレの現状について、11月10日、国家発展改革委員会の張平主任はインフレ圧力が予想以上に深刻だと認めています。同時に、張主任は中国の2010年通年の消費者物価指数(CPI)の成長率は、政府の目標である3%を上回る予測を発表しました。9月のCPIは前年同期比3.6%増となり、13ヶ月ぶりの高水準になっています。資金流動性を抑制するために、中国人民銀行(中央銀行)は10月19日に、3年ぶりの利上げを実施すると発表し、金融機関の1年物元建ての預金金利と貸出金利をそれぞれ0.25ポイント引き上げます。しかし、一回の利上げで、マイナス金利の現状が変えられてはおらず、物価上昇のスピードは加速しています。まもなく発表される10月のCPIはまた高値をつける予測があるため、利上げの観測が再び浮上しています。

利上げは不動産株にとってはマイナス材料です。そして、預金金利の利上げ幅が貸出金利の利上げ幅を上回る不均衡な利上げとなる場合は、銀行株にとってもマイナス影響があります。そのため、利上げ予想の影響で、中国本土と香港上場の銀行株と不動産株が下がっています。しかし、懸念が先行して下がり、実際に利上げがあったときに悪材料出尽くしとなって、上昇するという可能性も十分あることを考えておいて良いと思います。

中国の話からは少し飛びますが、先日、FRBは若干予想の中央値を上まわる資産(安全資産の米国債のみ)の買い入れ6000億ドルを発表しました。これは、大量のマネーを市場に放り込むことで、デフレ退治、景気の刺激、失業率改善を狙うものです。前回は2008年11月に今回を少し上回る8000億ドルが注ぎこまれ、さらに2009年3月には追加で新たに1兆1500億ドルもの資産買い取りが発表されました。今年春まで、これらのプログラムで実際に住宅3公社の債券、長期国債、ABS などの各金融機関保有の証券がFRBによって買われ、その代金が市場へ出回りました。これらは決して失業率などの経済指標を改善できるものではありませんでしたが、買い付けが終了した今年春までに株価を劇的に押し上げました。それからするとやや小ぶりではありますが、絶対額としては非常に大きな6000億ドルが新たに印刷され、注ぎ込まれるのです。

つまり、米国は中国とは異なり、積極的な金融緩和に動いているわけです。世界的にお金あまりが生み出す金融相場が継続されることが示唆されているのです。その資金は成長率が高い国に流れ込む可能性が高いと思います。前述のように、中国は短期的に経済にブレーキをかけているわけですが、その下がったところというのは全体の流れからみても面白い局面ではないかと思うわけです。