GWのトランプ大統領の発言以降世界的な景気停滞が警戒される

日本のゴールデンウィーク中にトランプ大統領が突如中国に対する関税を引き上げると表明し、実際5月10日に関税が引き上げられました。マーケットは米中の交渉がある程度順調に進んでおり、一定の妥結が行われると見込んでいたためネガティブ・サプライズとなり株価は世界的に大きく調整しました。

昨年末から今年の年初にかけておきたような中国発の景気停滞が再び起こるのではないかとの警戒感が強まり、安全資産の代表である米国債が買われて足元の利回りは2.1%程度まで大きく低下しています(グラフ参照)。

                   米国10年債利回りの推移
(出所)Bloombergデータよりマネックス証券作成

世界トップの経済大国である米国と第2位の中国の貿易活動が滞るとなれば、世界経済に影響が出ないはずがありません。グラフに示したように既に米国も中国も製造業景況指数(PMI)は落ち込んできています。今後昨冬に起きたような景気停滞が起きるリスクはかなり高まっていると思われます。

                    米国と中国のPMI推移
(出所)Bloombergデータよりマネックス証券作成

 

こうした状況を受けFRBのパウエル議長は景気が悪化した場合の対応策として利下げも選択肢に入ることを示し、マーケットを落ち着かせようとしました。米国株はパウエル議長の発言を受け大きく戻しましたが、株価下落の原因は前述したとおり世界的な景気停滞への懸念ですから、その状況の根本である米中の貿易対立が“一定の”解決を見ない限り再び株価が大きく上昇していくシナリオを描くことは難しいと考えます。

“一定の”と書いたのは、そもそも根本的に米中の対立は非常に根深いものであり今後長期間続いていく可能性が高いと考えているからです。そもそもこの対立の根本には経済的にも軍事的にも世界の覇権を握ってきた米国が、その地位を脅かすまでに成長した中国の脅威を少しでも押さえたいと考えているところにあります。そしてこれ以上の中国の台頭を許したくないというのは決してトランプ大統領の独断ではなく、米国議会や米国民の意志です。実際GALLUP社の調査によれば、足元でトランプ大統領の支持率は就任後最高の水準まで上昇しています。米国民も一定程度「中国に物申す大統領」を支持しているということでしょう。

来年に大統領選を控えている中で、トランプ大統領は中国との貿易交渉を自身の支持に結びつけたいという思惑があるはずです。ただ現在は強硬な姿勢を示していますが、一定の妥結が一層の支持に結びつくと判断すればどこかでサプライズを演出しつつ一時的な融和姿勢を示す可能性もあるでしょう。ただ、そのタイミングを正確に予想することは難しく、現在は一段の景気悪化と日経平均が2万円を割り込むような株安に備えてディフェンシブな姿勢を持つべき局面だと考えています。

ディフェンシブな姿勢とは、①現金比率を高めておく②昨年秋から冬にかけて同じような状況にあった際に堅調だった業種を選ぶ③好配当利回りの銘柄にシフトするといったことが考えられます。

昨年末の急落の際に堅調だった業種とは?

昨年の秋口から年末にかけて世界的に株価が急落した際の要因も、世界的な景気停滞への警戒感でした。今回の下落も概ね同じような要因で下落しているので、その時のマーケットの反応は参考にできるはずです。

以下は昨年の高値圏にあった9月末と急落後の12月末を比較した東証33業種の騰落率です。TOPIXが18%近く下落していますので、さすがにすべての業種が下落しています。ただ、空運業、電気・ガス業、陸運業、ゴム製品、食料品、などの業種はTOPIXをアウトパフォームしています。 

 

今回は上記5業種の中から業績が好調で割高感のない銘柄をマネックス銘柄スカウターの10年スクリーニング機能を使って抽出しました。具体的なスクリーニング条件は以下のとおりです。

・東証33業種が「空運業」「電気・ガス業」「陸運業」「ゴム製品」「食料品」のいずれか
・直近四半期の売上高・営業利益が5%以上の増収増益
・今期の会社予想の通期業績も売上高・営業利益が5%以上の増収増益
・予想PERが20倍以下

すると以下の11銘柄が抽出されました。

(出所)マネックス銘柄スカウター

ヒガシマル(2058)、林兼産業(2286)、SBSホールディングス(2384)、和弘食品(2813)、遠州トラック(9057)、日本ロジテム(9060)、丸全昭和運輸(9068)、アジア航測(9233)、東北電力(9506)、イーレックス(9517)、広島ガス(9535)の11銘柄です。

マネックス銘柄スカウターを活用いただくと上記の銘柄のビジネスの概要や業績の推移などをご確認いただけますのでぜひお試しください。

好配当利回りの大手商社への投資も一考の価値あり

続いて好配当利回りの銘柄をご紹介します。同じく銘柄スカウターの10年スクリーニングを使って、「予想配当利回り4%以上」の銘柄を抽出すると、大手商社が特に目に付きます。さらに条件をしぼって業種を「卸売業」「時価総額3000億円以上」とすると以下の6銘柄が抽出されました。

(出所)マネックス銘柄スカウター 予想配当利回りは会社予想の配当予想に基づく予想

住友商事(8053)、丸紅(8002)、双日(2768)、三井物産(8031)、伊藤忠商事(8001)、三菱商事(8058)の6銘柄です。いずれも名だたる大手商社ですが、いずれも好配当利回りで住友商事にいたっては予想配当利回りが5.6%あります。

大手商社はエネルギー価格の変動が業績に与える影響が大きく、またビジネスが多岐にわたることから業績の予想や分析を行うことが難しく普段のレポートではあまり紹介することはありません。しかし予想配当利回りがこれほどの好水準であれば一定の投資妙味があるのではと考えます。

本レポートが皆様のご参考になれば幸いです。