今週の相場動向
相場回顧 BTC:週足で10%超の大幅下落、米国マネー回帰によるものか
BTCは急落が相次ぎ週足で10%超の大幅下落となった。
今回の下落については短期的な調整との見方もあるが、米国を中心とする株式為替市場の変化が大きく影響したと思われる。最初にBTC価格が急落した5/31には、メキシコ関税賦課問題やFRB副議長発言による米国利下げ観測の高まりによってドル円は1円超下落した。
6/4には、FRB議長発言がそれを後押しし一時1ドル=107円台を記録。この時もまたBTC価格は急落した。週後半にかけては、利下げ期待による米株高や貿易摩擦懸念の後退によってドル円が下げ止まり、BTCもBTC=84万円台で安定した推移となった。
他にもBitMEXのメンテナンス前のポジション調整が影響した部分はあるだろうが、週全体の動きとしてはこれまで暗号資産市場に流れてきた資金が安全資産の円そして米国株に回帰したと考えられる。
今週のトピックス
- 暗号資産の業者登録制で足並み、G20が資金洗浄対策。(5/31)
- 仮想通貨の名称が「暗号資産」に、改正資金決済法が成立。(5/31)
- Ernst&YoungがETHのプライバシー強化技術「Nightfall」をGithub上に公開。(5/31)
- TetherがEOS上でのUSDT発行を正式に発表。(5/31)
- EOS開発を手掛けるBlock.oneがソーシャルメディア「Voice」を発表。(6/1)
- 米国商品先物取引委員会がFacebookと独自通貨発行について協議、FT報道。(6/2)
- BinanceがDEXサービスのアクセス制限対象国を公開。(6/2)
- 大手小売Carrefourがブロックチェーン基盤の追跡システム導入で一部製品の売上増加、Reuter報道。(6/3)
- Binanceが英ポンド建てステーブルコインBGBPをテスト発行。(6/3)
- OKEx子会社が米ドルに連動したステーブルコインUSDKを発行。(6/3)
- 海外送金を即時決済、日米欧の銀行が電子通貨構想。(6/3)
- TRON創始者が著名投資家Warren Buffett氏との会食権をチャリティオークションで落札。(6/3)
- MicrosoftがAzure Blockchain用のスマートコントラクト検証ツール「VeriSol」を発表。(6/3)
- BTC急落、大手取引所BitMEXのシステムメンテナンスが影響か。(6/4)
- 米SECが100億円調達のICOプロジェクト「Kik」を未登録証券として訴追。(6/4)
- JVCEAが「利用者財産の分別管理のチェック項目及びチェックのポイント」を公表。(6/4)
- マレーシア証券監督当局(SC)が同国初となる暗号資産取引所として3社を登録。(6/4)
- AppleがiOS13で開発者向け「クリプトキット」を追加。(6/4)
- 暗号資産、100億円申告漏れ50人と30社、国税局指摘。(6/5)
- CoincheckがMONAの取扱いを正式に開始。(6/5)
- 楽天とJR東日本がキャッシュレス決済事業で連携することを発表。(6/5)
- INDETAILが北海道電力とEVスタンドプラットフォーム構築を目指し共同研究。(6/6)
- アステリアがブロックチェーンを活用した議決権投票システムを同社の株主総会へ導入。(6/6)
- コミュニティオがXTech Venturesとセレスより1億円を資金調達。(6/6
- NEM財団がCatapultサーバーの第4マイルストーン「DRAGON」の詳細を発表。(6/6)
来週の相場予想
BTCは方向感を探る展開か
米国情勢に再び動きがあり、ドル安そして米株高が進めば暗号資産市場には下げ圧力がかかるだろう。
一方、雇用統計や消費者物価指数などの米国経済指標が好調で利下げ観測が弱まれば、再び米国マネーの流入が進むことも考えられる。いずれにしても、グローバルマーケット動向がはっきりするまでは、相場が再びBTC=100万円目指して急上昇することも、5月上昇前の価格水準に戻ることもないと思われる。
直近上値としてはBTC=87万円(8,000ドル)を回復できるか、下値としてはBTC=81万円(7,500ドル)を下回るかに注目。
来週のトピックス
- Zilliqa(ZIL)、独自チェーン上でスマートコントラクトが有効化。(6/10)
- Stellar(XLM)、プロトコルアップデートに関するバリデーター投票を実施。(6/10)
- Cog X 2019がロンドンで開催。(6/10-12)
- DIGITAL ASSET SUMMITがロンドンで開催。(6/12)
- UNCHAINがベルリンで開催。(6/14-15)
- Cosmos Hackathonがベルリンで開催。(6/15-16)
コラム:年金制度が破綻しかけている今考えるべきは個の生産性である
2017年に起きたICOの流行。当時、世界中の多くの人が「ICOをすればお金が集まる」「ICOに投資すればお金が儲かる」という迷信にとらわれていた。まるでペーパーカンパニーの株式投資に皆が踊り狂った18世紀イギリスの南海バブルのように。
そんな中、業界で一際話題になったICO詐欺がある。アメリカ発祥のBitConnectだ。彼らは世界中の投資家に高額配当を謳い、ポンジスキームで多額の資金を集めた。詐欺の手口は今ではありきたりのものだが、YoutubeにアップされたPR動画があまりにも衝撃的だった。「ヘイヘイヘイ〜♪ヘイヘイヘイ〜♪」と代表が歌い出すこの動画を見て、腹を抱えて笑った人も少なくないだろう。何なら動画で後ろに写る人たちすら代表の講演を聞いて笑っている。見ればわかるが、彼らは詐欺を通り越して本物だ。
と、同じポンジスキームICOに関する記事を読んでふと思い出したわけだが、この業界に限らず同様の手口を使った詐欺は世の中に数多く存在している。そして、悲しいことに今の日本国民は強制的にその“詐欺”の被害者になりつつある。
金融庁は6月3日、年金だけでは老後の資金を賄えず、95歳まで生きるには夫婦で約2,000万円の蓄えが必要になるとの試算を報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中で発表した。つまり、今の20代30代の若者は年金の支払いを強制されながら、それが将来その全額が返ってくることはなく、さらに1人あたり約1,000万円の負債を抱えていることになる。戦後の経済成長期には増加する人口によってピラミッドの上の人たちは十分に支えられていたが、最近の少子高齢化そして経済成長の鈍化によってそれが全く機能しなくなっている。私たちは、ねずみ講として設計された年金システムをアップデートする必要性に迫られているのだ。
政府は年金支給開始年齢の引き上げや国民の資産運用推進といった安易な策を考えている。これについて私見を述べるならば、年金だけでなく生活保護、失業保険といった社会保障制度全てを見直し、ベーシックインカムの導入を検討すべきである。高齢者、生活保護者、失業者の棲み分けが無くなり、労働者か非労働者しか社会にいなくなれば行政負担は大きく減るだろう。支給財源については、増税は避けられないが、少子高齢化が進む日本ではその負担の絶対額が年々大きく増えることはない。定年退職の考えも捨てて、働きたい人は働き、そうでない人は最低限の支給で暮らす。それで良いのだ。
とは述べたものの、ここまで大きく破綻したシステムを立て直す正解策は誰にもわからないだろう。しかし、一つ確かに言えることは、年金の話に限らず、個人が国や会社に守られて生活する時代は終わりを迎えつつあるということだ。人口が減少し国全体のGDP減少が避けられない中では、国の経済を活性化するために一人あたりの生産性を高めるしかない。生産性が高い人材であれば自ずと仕事にも恵まれ、老後生活の心配などしなくて済むだろう。大半の人がアンコントローラブルな制度うんぬんは政府に任せて、私たち国民、なかでも特に若い世代の人たちは意識的に個の生産性向上に努めるべきと私は思う。
編集校正:マネックス仮想通貨研究所