今週の相場動向

相場回顧 BTC:堅調な推移となり一時はBTC=60万円を突破

BTCは、緩やかに上昇しては大きく価格を下げる動きを繰り返したが、堅調な推移となり週後半にはBTC=60万円を超える場面も見られた。4/11にはBithumbの昨年度大幅業績赤字の発表が影響してか再び価格をBTC=56万円付近まで下げたが、取引高についても前週の急騰から依然高い水準を維持している。

今週は、中国国家発展改革委員会(NDRC)の推進、制限もしくは禁止すべき産業リストの発表を受けて、中国でのマイニング禁止検討が各種メディアで大々的に報じられた。しかし、2011年に同様の発表があって以降NDRCによる具体的な動きがなかったことから、真に受ける投資家も少なく相場への影響は限定的となった。

また、英国のEU離脱問題を巡って株式市場は不安定な動きとなり、為替も円高に動いたが、これらの影響も軽微であったと思われる。逆に、上昇期待の高まっている仮想通貨市場に資金を寄せる動きが相場を後押しした面もあるだろう。

その他、OKExではIEOを開始してから取引高が増加していることがCoinGeckoで確認できる。BTC=60万円を突破した一時的な上昇の一因か。

 

今週のトピックス

  • SonyMusicが音楽制作プラットフォーム「soundmain」の ティザーサイトをオープン。(4/5)
  • Coinbase ProでEOS、REP、MKRが新規上場。(4/8)
  • 創業者の死後話題となっていたカナダの仮想通貨取引所QuadrigaCXが正式に破綻。(4/8)
  • ステーブルコインTUSDを発行するTrustTokenが監査結果を公表。(4/8)
  • Facebookが仮想通貨関連事業の為に巨額資金調達を検討か。(4/8)
  • ブロックチェーンロック株式会社が電子ロックシステム「KEYVOX」を立ち上げ。(4/8)
  • LightningNetwork上に開発された分散型取引所「Sparkswap」がβ版をローンチ。(4/8)
  • bitFlyerがbitFlyer Lightningのサービス内容変更のスケジュールを発表。(4/8)
  • モーリシャス共和国がSTO規制に関する第2回目のガイダンスノートを発行。(4/8)
  • ジブラルタル証券取引所(GSX)がブロックチェーン基盤の証券を上場。(4/9)
  • Bitstampがニューヨーク州規制当局(NYDFS)から仮想通貨ライセンス取得。(4/9)
  • Ripple社提供のxRapidが「World Changing Ideas Awards」にノミネート。(4/9)
  • Bitfinexが最低預金額1万ドルを撤廃し全てのトレーダーに取引サービスを解放。(4/9)
  • 中国国家発展改革委員会(NDRC)が仮想通貨マイニングの禁止を検討。(4/9)
  • remixpointが仮想通貨フォロートレード「マネコ」を手がけるGaiaに出資。(4/9)
  • 三菱UFJが開発を進める独自通貨「MUFGコイン」、今年後半に実用化へ。(4/9)
  • DMM.comが仮想通貨の資産管理サービス「DAsset」のβ版をリリース。(4/9)
  • Opera Softwareがウォレット機能を追加したWebブラウザ「Opera 60」をリリース。(4/9)
  • Mozillaがマイニングと指紋採取をコンテンツブロックの対象にする計画を発表。(4/9)
  • Parity TechnologyがEthereum用のウォレットアプリParity Fether ver.0.3をリリース。(4/9)
  • NEM.io財団がCatapultの開発に関わる新たなサービスプロバイダーを発表。(4/10)
  • startbahn株式会社がSBIアートオークション株式会社との事業提携を発表。(4/10)
  • フィスコ仮想通貨取引所(FCCE)が2019年中にZaifと統合へ。(4/10)
  • 仮想通貨の無断採掘が問題となったCoinhive事件の無罪判決に控訴。(4/10)
  • OKExの初回IEOとしてBLOCのトークンセールが開始。(4/10)
  • Coinbaseが英国向けにVISAデビットカードCoinbase Cardをリリース。(4/11)
  • OKWAVEがLIFEX RESEARCH PTE. LTD.とブロックチェーンの技術協力。(4/11)
  • トーキョーサンマルナナ株式会社がブロックチェーンロック株式会社と業務提携。(4/11
  • Bithumbが2018年度業績約2,000億ウォンもの大幅赤字を発表。(4/11)

来週の相場予想

BTCは上昇基調となるか

価格の急騰との関係性は定かではないが、日本国内における仮想通貨関連企業の動きが海外に劣らず活発化している。それに伴い、新聞社をはじめとする伝統的な国内大手メディアによる仮想通貨・ブロックチェーン関連ニュースの取扱いも増えていることから、日本での業界への注目が再度高まりつつあると言えるだろう。

注目度が高まれば、アクティブな投資家が増えて価格が上昇していくことは言うまでもない。短期利益を狙った売りにより価格を大きく下げることはありながらも、週足では買い優勢の展開を予想する。

引き続き直近下値としてはBTC=56万円付近(5,000ドル)を意識し、BTC=60万円(5,500ドル)を超えられるかに注目したい。

来週のトピックス

  • Zcoin (XZC)がパブリックテストを実施予定。(4/15)
  • IOHK Summitがマイアミで開催。(4/16-17)
  • Paris Blockchain Week Summitがパリで開催。(4/16-17)
  • Vechain Summitがサンフランシスコで開催。(4/18)
  • DigiByte Summit 2019がアムステルダムで開催。(4/19)
  • NEO JOY 2019が北京で開催。(4/20)

業界関連動向

規制動向 中国マイニング禁止を計画か

4/8、中国の国家発展改革委員会(NDRC)は、「当局が推進、制限、もしくは禁止を望んでいる産業リストの改訂版(草案)」を公表した。この中の規制すべき産業の一つに仮想通貨のマイニングが含まれていたことが大きな話題を呼んでいる。

この中国マイニング禁止報道に相場はそれほど反応しなかった。NDRCは同じ提案を2011年にもしているが現在まで具体的な行動はなく、今回もまた掛け声倒れに終わるとの見方が強い。一方で、悲観的な見方もある。NDRCは現在一般からの意見を募っており、仮に草案が正式にまとまれば、仮想通貨のマイニングが直ちに禁止されることも考えられる。意見の募集は5月7日までとなっており、当面NDRCの動向から目が離せない。
中国でのマイニング禁止は業界内で賛否両論を呼んでいる。ビットコインは、現在マイニングの7割強を中国が占めていると言われており、禁止措置によってマイニングの中央集権化問題を解決できる可能性がある。逆を言えば、大半を占める中国でのマイニングがなくなれば、ビットコインのネットワークそのものに障害が起きることも想定できる。いずれにせよ、業界への影響は避けられなさそうだ。

個別企業動向① TrueUSD(TUSD)、米ドル資産の裏付けを証明

4/8、米ドルと1対1で対応するステーブルコイン、TUSDを発行しているTrustTokenは、発行するすべてのTUSD相当額を米ドルで保有していることをブログ上で公表した。米ドル対応のステーブルコインといえば、Tether発行のUSDTやGemini発行のGUSDなどがあるが、ユーザー保護の観点から発行元が裏付け資産を保有しているかどうかが懸念されることが多い。
TrustTokenはあらゆる資産のトークン化を目指すプラットフォームだ。公認会計士事務所Cohen & Companyが実施した3/31時点の監査報告によると、TrustTokenのエスクロー口座の米ドル残高は1億9906万3885ドル(約221億円)で、TUSDの発行残高は1億9898万2291 (約221億円)であるという。発行残高とほぼ同等の米ドルの保有が確認されたことにより、TUSDの信用性が示されたことになる。
今回の発表により、TUSDをはじめとするその他のステーブルコインもより一層、透明性信用性を求められるようになることが考えられる。

個別企業動向② 三菱UFJフィナンシャル・グループ、「coin」を2019年内に実現

4/9、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の三毛兼承社長が「coin」を2019年後半に実用化する方針を明かした。「coin」はブロックチェーン技術を基盤にしたMUFG独自のデジタル通貨だ。もとは「MUFG COIN」という名称であったが、MUFG以外に利用が広がりやすいように、2018年10月に名称が変更された。
「coin」は、1coin=1円となるように設計されたステーブルコインだ。キャッシュレス決済手段にとどまらず、流通や交通系企業のポイントなど幅広い用途を想定している。以前から、2019年度に10万人規模の大規模実証実験を行うと公表していたが、今回その実用化の目安時期が明かされたことで、今後MUFGが取り組みを本格化させていくことが予想される。
他の金融機関では、みずほフィナンシャル・グループが開発を進める「Jコイン」があるが、こちらも実用化には至っていない。MUFGが年内の実用化を発表したことで、みずほとの勢力争いが加速するだろう。

コラム マスメディアの動向から見る、最近の仮想通貨業界の盛り上がり

インターネットそしてスマートフォンの普及により、私たちはいつどこにいても情報を集めることができるようになった。それに伴い、かつては情報配信媒体として支配的であった新聞社とテレビ局の権威が、ネット上の新たな巨大メディアへと移っていった。今では、それらの権威がLINEニュースやNewspicks、SmartNewsなどさらに多くのメディアに分散されつつある。このような時代では、伝統的なマスメディアの存在価値が希薄化しているとの声も多い。しかし、今でも変わらないことは、彼らが大衆の興味関心を一番に表しているということだ。

以上を踏まえて、マスメディアが報じる仮想通貨・ブロックチェーン業界のニュースの変遷を辿ると面白い。仮想通貨・ブロックチェーンが業界として成り立つ以前には、マスメディアはビットコインなどに関するニュースをほとんど取り上げなかった。報じられたとしても、キプロス危機やマウントゴックス事件といった世界経済に影響を及ぼしうる大きな事件に限られていた。「仮想通貨」「ビットコイン」という言葉が世間に全く定着していない頃の話である。

大衆の関心が業界に向く一つの転機になったのは、やはり2017年である。ビットコイン価格が上昇するに連れて、日本の新聞社やテレビ局そしてロイター、ブルームバーグといった世界的メディアまでが揃って業界ニュースを取り上げた。この時は仮想通貨の価格に言及する報道も多かったが、その他にもICOやハードフォークといった業界全般のニュースが報じられた。しかし、2018年に価格が暴落し低迷すると、「仮想通貨は終わった」という世間的なイメージの通りに報道の数をめっきりと少なくした。

価格に相関して世間の関心は弱まったが、規制環境や投資環境の整備そしてプロダクトの開発は着実に進められ、業界はこの一年間ゆっくりではあるが一歩一歩成長してきた。前週のビットコイン価格の暴騰を抜きにしても、今年に入ってマスメディアが報じる業界ニュースの数は、2017年の水準とまではいかないが増える傾向にある。それだけ世間的な業界への興味関心が回復しつつあるということだろう。特に、今ではビジネスとして仮想通貨・ブロックチェーンを無視できないフェーズに入っている。今後それが個人にまで拡大すれば、業界はさらなる盛り上がりを見せるに違いない。

 

編集校正:マネックス仮想通貨研究所