中国の「十一五」計画(第11次5ヵ年計画)には2006年~2010年の国内総生産(GDP)あたりのエネルギー消費量を20%削減する目標があります。ところが、実際には、2006年~2009年、中国のGDP1万元あたりのエネルギー消費量は14.38%減少に留まっています。このままいくと2010年の20%削減という目標達成は困難です。そこで、中国政府は2010年5月に省エネ・排出削減を強化する指導意見を発表しました。そして9月に入り、中央政府の政策方針に沿って、一部の地方政府が製鋼をはじめとするエネルギー消費の高い産業への電力供給を制限する政策を実施し始めました。まず、中国の主要鉄鋼生産地である河北省で二酸化炭素(CO2)削減目標を達成するため、非効率な中小鉄鋼メーカーに対する生産中止命令や電力供給制限が本格的に始まりました。そして浙江、江蘇、広西、山西、安徽などの省も次々と動きを出す模様です。

ここまで、電力制限による鉄鋼生産量の減少は2750万トンに達し、中国の単月鉄鋼生産量の40%を占めているようです。そして、生産量の減少で、鉄鋼の供給過剰問題が改善され、低迷していた鉄鋼価格は9月以後上昇しつつあります。9月14日、高級鋼板を主力とする中国最大手の鉄鋼メーカー、宝山鋼鉄(中国本土A株上場)は、10月から製品価格を引き上げると発表しました。値上げ幅は製品別で110~380人民元/トンです。業界大手の河北鋼鉄と沙鋼集団もこのほど値上げ計画を発表しました。そして、鞍鋼(0347)や武漢鋼鉄(中国本土A株)なども値上げを行う観測があります。

同時に、鉄鋼企業の粗利益率を大きく圧迫している鉄鉱石価格の高騰についてですが、9月初め、鉄鉱石の2大サプライヤーであるヴァーレとリオ・ティントは第4四半期の鉄鉱石価格を第3四半期比、それぞれ10%と13%引き下げる方針を明らかにしました。これで原材料コストが一時的改善され、さらに製品販売価格の上昇で、鉄鋼企業の業績改善が期待できます。これに加えて、2011年は中国の「十二五」計画(第12次5ヵ年計画)の初年度になります。5カ年計画の初年度は大量の予算が投じられる傾向があり、各種インフラ・建設プロジェクトが加速される可能性があります。もちろんこれは鉄鋼の消費にプラスです。これらの材料を考えると、中国の鉄鋼業界は調べてみる価値があるのではないかと考えます。