2009年の香港不動産価格は27%上昇し、2010年1~7月にはさらに11%上昇。現在、一部の物件の販売単価はすでに1997年来の高値を更新。同時に、取引量も拡大しています。香港土地登録所のデータによると、2010年上半期、香港不動産の取引契約は77262件あり、前年同期比31.3%増。不動産の売買金額は3110.1億香港ドルで、同51.2%増。そして、この香港不動産の価格上昇と取引量の拡大は中国本土の富豪による投資に関係があるとみられています。香港金融管理局のデータによると、2009年の香港不動産の取引金額は4000億香港ドルで、うちの10%は中国本土の中国人による取引です。

特に中国本土の金持ちは香港の高級住宅に興味があるようです。実際のところ、2009年下半期、販売金額が1200万香港ドル以上の高級住宅において、22.6%の買い手は中国本土の富豪達です。その影響を受け、2009年、香港の普通住宅の販売価格が28%上昇したのに対し、高級住宅の販売価格は35%~40%と大きく上昇しました。さらに、2010年上半期、販売金額が1200万香港ドル以上である高級住宅の中国本土富豪の売買に占める比率は2009年下半期の22.6%から35%にまで大幅に拡大。その原因について、中国本土の不動産引締め策の実施によって、従来中国本土に向けられていた不動産投資資金が香港に向けられているのかもしれませんし、香港に移住するため高級住宅を買う本土富豪が増えている可能性もあります。

数年前、香港の不動産市場は暴落したことがあります。1997年は中国への香港返還バブルの発生で香港の不動産価格は狂乱的に上昇しましたが、1998年のアジア金融危機の発生で下落。その後もITバブルの発生とその崩壊をはさんで2003年にはさらに下落して、1997年から2003年の香港の不動産価格は70%という大幅な下落となりました。そして現在、不動産価格の加速的上昇で、香港不動産市場は再び同じような暴落が起こるのではないかという懸念が出ています。もっとも、香港返還バブル当時と比べ、投資者の危機意識も高まっていますし、香港政府も早速警戒した動きをしています。8月13日、香港政府は住宅ローンの引締めなどの不動産抑制策を発表しています。

そして、もう1つこのように香港不動産が上昇している背景として、好景気時の低金利状態ということがあります。香港ドルは米ドルにペッグしているため、香港の金利は米国の金利と連動しています。現在、香港の景気は中国の状態が良いために、そして、前述のように中国マネーが香港にきているために好景気の状態なのですが、米国の景気が悪く、金利が最低水準にあるために、好景気時の低金利状態となっているのです。1992~1993年もそうでしたが、このような状態では香港の景気は加速度的によくなり、株も上がりやすくなります。そして現在、米国の景気はさらに低迷が長引く傾向がある一方で、中国の高成長は続いていきそうです。この状態が続く限り、香港の好景気時の低金利状態は継続されるわけですから、今後は徐々に香港に資金が流れてくるかもしれません。