中国の上場銀行は2010年上半期の決算を発表していますがおおむね良好な決算となっています。中国五大国有銀行である中国工商銀行(1398)、中国銀行(3988)、建設銀行(0939)、交通銀行(3328)、農業銀行(1288)の、それぞれの純利益は前年同期比27.6%、26.9%、26.8%、30.7%、40.2%増となっています。他の商業銀行も好調で、招商銀行(3968)、民生銀行(1988)、中信銀行(0998)の純利益はそれぞれ59.8%、20.2%、45.4%増加しています。 好決算を出した主な要因としては、中国の経済対策に伴う貸し出しの拡大、利鞘の拡大などがあります。例えば、中国銀行の資産総額と負債総額はそれぞれ10.7%と11.1%拡大しています。有利子資産は資産総額の96.6%を占めており、貸付は有利子資産の57.8%にまで拡大しています。

その一方で、有利子資産の拡大は銀行の自己資本比率の下落につながっています。中国銀行は上半期に400億元の転換社債を発行したことで、自己資本比率が上昇した特殊な例ですが、他の銀行は例外なく下落しています。例えば、工商銀行の自己資本比率は11.3%、2009年末より1ポイントも下がっています。自己資本を充実するために、各銀行は資本調達計画を出しています。すでに国務院から許可を取った計画をみると、工商銀行、建設銀行、中国銀行、交通銀行の4大銀行の資本調達計画の金額合計は2870億元もあります。そして、2010年上半期の決算発表で資本調達計画を発表した銀行も増えています。例えば、中信銀行は5月に165億元の劣後債を発行し、今回それとは別にA株とH株市場で260億元の増資を行う計画です。民生銀行は2009年11月に香港市場で新規上場したばかりですが、150億元の劣後債を発行する計画を発表しました。   統計機関のWIND社によると、14社の上場銀行はこれからA株市場で3522.7億元、香港H株市場で1439.5億元を調達する計画があり、合計金額は4962.2億元となっています。これらの増資計画は2010年第4四半期に集中的に行われる可能性があるため、短期的には銀行株の株価を抑える恐れがあります。実際のところ、2010年に入ってから、銀行株増資の懸念があるため、銀行株のパフォーマンスが良く、株価には割安感が出ています。2010年の予想PERは10倍前後となっている一方で、今後2~3年間の年間平均予想利益成長率は20%程度と見られるため、PERを予想成長率で割ったPEGレシオは、割安水準と判断できる0.5前後となっています。