今週の相場動向

相場回顧 BTC:LTC急騰を受けて連れ高し大きく上昇

BTCは、先週末にLTC急騰を受けて連れ高しBTC=40万円まで上昇すると、その後は短期筋による利益確定売りも入りやや価格を下げたBTC=39万円付近で安定的な推移となった。

今回の上昇に関して、米SEC幹部の仮想通貨ETFに関するインタビュー文書が影響したとの見方もある。今週は、米中貿易協議の進展や米国政府再閉鎖回避への期待の高まりから、株式市場でリスク回避ムードが和らぎ、仮想通貨市場にとっても後押しとなった。

LTCは、創業者Charlie Lee氏が以前より強調していたLightningNetwork技術の導入や匿名性向上への期待が高まったことで、週足で25%以上の上昇となった。

 

今週のトピックス

  • 金融庁が仮想通貨に関する相談件数が前年比大幅減と発表。(2/8)
  • アルゼンチンの公共交通ICカードでBTCチャージが可能に。(2/8)
  • Litecoin(LTC)が時価総額4位に浮上、Mimblewimble実装の期待が影響か。(2/9)
  • UAE送金決済会社がXRPを用いたタイ向け送金サービスを開始。(2/10)
  • ナスダック指数に仮想通貨のインデックス指数が追加。(2/11)
  • ALS協会がTRONと提携しチャリティーキャンペーンを開始。(2/11)
  • Binance DEXのテストネット立ち上げ日が来週20日に決定。(2/12)
  • BithumbがUAEのブロックチェーン企業と合弁会社設立に向け業務提携。(2/12)
  • IntelがHyperledgerFabric基盤の企業向けソリューションを発表。(2/12)
  • MUFGが米国テック企業Akamaiと合弁会社を設立。(2/12)
  • Coinbaseがウォレットに秘密鍵のバックアップ機能を追加。(2/12)
  • GMOインターネットが決算発表にてマイニング事業の継続方針を発表。(2/12)
  • Reality Shares ETF Trustsが仮想通貨ETFの申請を取り下げ。(2/12)
  • QuadrigaCXがアクセス不可能なコールドウォレットにビットコインを転送。(2/12)
  • ビットトレード株式会社が社名をフォビジャパン株式会社に変更。(2/13)
  • みんなのビットコイン株式会社が社名を楽天ウォレット株式会社に変更。(2/13)
  • Ripple社がXRP Ledgerのアップグレードを発表。(2/13)
  • 米SECがCBOE再申請分の仮想通貨ETFに関する審査を開始。(2/13)
  • 中国IT大手BaiduがBaidu Blockchain Engineを正式リリース。(2/14)
  • 新経済連盟が金融庁の仮想通貨規制に関する要望書を発表。(2/14)
  • Aerial PartnersがYahoo子会社等から1.8億円を資金調達。(2/14)
  • 米大手金融J.P.Morganが独自通貨JPM Coinの発行計画を発表。(2/14)

来週の相場予想

来週の相場予想

BTC=40万円を超えられるかに注目。

米SECの仮想通貨ETF審査再開や米金融大手J.P.Morganのデジタル通貨発行計画といった好材料が見られる他、株式市場においてもリスク回避ムードが緩和しており、比較的買いに動きやすい状況と言える。証拠金取引においてもロング優勢となっており市場全体として上昇期待の高まりが伺える。また、来週はBinance Chainテストネット立ち上げを控えており、その前後にBNBが上昇となれば今週のように連れ高する展開も期待できるだろう。

一方で、業界企業動向に対して市場の反応が鈍い状況は変わらず、米国情勢が傾けば再び上値を抑えられる展開となるだろう。

来週のトピックス

  • Nakamoto’s Den Conferenceがキプロスで開催。(2/19-20)
  • Blockchain Economyがイスタンブールで開催。(2/20)
  • Binance Chainテストネット立ち上げ予定。(2/20)
  • Coincheckでんきサービス再開予定。(2/20)
  • CME先物BTCG19最終取引日。(2/22)

業界関連動向

規制動向 トルコ警察当局がハッカー24人を逮捕

2/12、トルコ警察当局が、国内の仮想通貨関連企業にハッキングし、1,300万トルコリラ(約2.7億円)相当の仮想通貨を盗んだ容疑で、24人を逮捕したと地元メディアが報じた。

報道によれば、被害に遭った国内企業が警察に報告レポートを提出した後、サイバー犯罪支局による捜査によって容疑者が摘発された。容疑者らが国内で人気のオンラインゲームを通じてやり取りをしていたことから、警察側は身元を突き止めることができたという。逮捕された24人からは一部現金と仮想通貨の資産が押収されたが、盗まれた多くの行方については未だ調査中である。

サイバー犯罪警察あるいはホワイトハッカーによるハッキング攻撃者の追跡は、昨年にNEMの一件で大変話題となった。結果、攻撃者を突き止めることはできず、NEM財団が捜査を打ち切る形で話は収束したが、今後仮想通貨業界におけるサイバー犯罪対策をどう警察と政府が連携して進めていくかは議論の的になるだろう。KYC(Know Your Customer)だけではなくKYT(Know Your Transaction)の必要性が叫ばれる。

技術動向 BEAMがMimblewimbleに対応したLightning Networkの導入を計画

2/12、BEAMはMimblewimbleに対応したLightning Network(LN)の導入を計画していると発表した。

BEAMは、Mimblewimbleと呼ばれる技術を実装したブロックチェーンだ。Mimblewimbleは、ビットコインにおけるスケーラビリティと匿名性の両方の問題を解決しうる技術として、以前からビットコインの開発コミュニティで議論されてきた。

BEAMは、ブロックタイムが1分と、ビットコインのそれと比較して格段に速い。しかし、それでもクレジットカードに代表される一般的な電子決済サービスと同じレベルではないことを課題として認識しており、そのソリューションとしてLNの導入計画に至ったとのことである。

Mimblewimbleは、設計上ビットコインに実装することが難しい反面、LNとの相性は悪くないと以前から言われていた。

BEAMは先月にメインネットをローンチし、現在も新しい機能の追加に向けて開発を進めている。その中の一つとして今回のLN導入に期待している人たちは少なくないようだ。

個別企業動向 相場低迷の中、業界各社が相次いで資金調達を発表

今週は仮想通貨関連企業による資金調達ニュースが相次いだ。

2/11、フィリピン向け送金サービスを提供するSendFriendが、Ripple社やMasterCard財団等から170万米ドルを資金調達したと発表した。同社はRippleNetの加盟企業としても知られ、xRapidを採用することで国際送金の効率化を目指している。

2/12、調査会社ChainalysisがVC大手Accel等から3,000万米ドルを資金調達したと発表した。同社は企業向けにKYT(Know Your Transaction)サービスを展開しており、今回の調達額についてはロンドンの新事務所設立やサービス拡充に使う予定とのことだ。

同日、資産管理会社Morgan Creek Digitalが、仮想通貨・ブロックチェーン企業を対象とした新たなベンチャーファンド設立の為に、公的年金基金や保険会社等から4,000万米ドルを資金調達したと各種メディアが報じた。

2/14、国内においても、仮想通貨税務サービスを提供する株式会社Aerial Partnersが、Yahoo子会社等から1.8億円を資金調達したと発表した。同社は今回の資金調達に合わせて社外取締役を増やし、事業拡大に向けた経営管理態勢の強化も行っている。

仮想通貨の相場はすっかり落ち込んでいるが、これらに見られるように、機関投資家の仮想通貨・ブロックチェーン関連企業への投資熱は依然冷めていない。むしろ、増しているほどであり、それだけ多くの企業が業界の未来に期待しているということだろう。

コラム 遺伝子レベルに規定された人間の行動特性は仮想通貨の世界でも変わらない

 人類の歴史を振り返ると、人間という生き物は、先祖代々の遺伝子を引き継ぎ、今もなお”猿”という生き物に変わりないことがわかる。私たち人間は自分たちより強い生き物に勝つため群れをなして行動してきた。その群れの中では、どの雄も長を目指し、どの雌も長の子を産むことを目指した。別の群れが現れれば、自分たちの群れを守ろうと必死で戦った。群れの生活環境が厳しくなると、新しく良好な住処を求めて群れで大移動した。群れごとに話す言葉や風習も違ったが、群れ同士が合わさることで次第にその数も減った。

 このような行動は、遺伝子レベルで私たちに植えつけられているものである。個人で言えば、学校内競争、大学受験、就職活動、企業内の出世争い等。企業で言えば、市場シェア競争、海外展開、企業合併等。国で言えば、軍事戦争、経済戦争、国家連合等。これら全ての根底にあるのは、”猿”という生き物としての群れを作る習性と、群れのトップを目指す習性、そして何より生存本能である。原始時代に比べれば、現代はテクノロジーも発展し全くの別世界と思われるかもしれないが、生き物としての本質的な行動特性は何万年も前から変わっていないのである。

 それでは、仮想通貨・ブロックチェーンの世界ではどうか。物理的には当然、自身が生き残る為の人の移動や、企業そして国同士の争いが起きている。しかし、ここで注目すべきは目には見えないヴァーチャルな動きの方だ。そこでは、トークンという不可視だが価値あるものを介して群れが出来上がる。群れの強弱を決めるのは、開発面もあるが、それ以上に流通量や時価総額といったトークンの価値そのものに依るところが大きいだろう。つまり、その群れの人間は他の群れに負けないよう啓蒙活動に励む。その方向性を巡り群れが分裂することもあるが、実質的には個人として独立しており、特定の群れに限定されない為、群れの状況が悪化すればすぐに他の群れに移ることができる。

 このように見ると、仮想通貨・ブロックチェーンの世界では群れの流動性が現実に比べて高いことがわかる。ヴァーチャルな世界である為これは当然のことなのだが、価値を介在している点で、これまでのインターネットの世界とは大きく性質が異なると言える。単に個人が何かのイデオロギーに共感して集まるだけではなく、それぞれが生存本能に従って行動するという意味では、この世界は紛れもなく私たち人間が生きる”現実世界”の一つと言えるのかもしれない。

 

編集校正:マネックス仮想通貨研究所