今週の相場動向
相場回顧 BTCは方向感の定まらない展開
BTCは先週に米SECが仮想通貨ETFの審査を延期すると発表して以降売りが強まったが、BTC=37万円付近で概ね下げ止まり、影響は短期的なものとなった。買い戻しによりBTC=40万円を回復する場面も見られたが、特段大きな材料に欠く中やはり上値は重く、週を通じて方向感の定まらない展開となった。
一方で、今週も日本企業の米国仮想通貨事業構想や独シュツットガルト証券取引所の仮想通貨取引所開設計画の発表等が見られ、業界内の企業活動は相場の低迷を余所に関心が衰えていない。
ETHはConstantinopleハードフォークの予定発表直後に強い動きを見せたが、その後は軟調な推移となり週足ではBTC建で横ばいとなった。
今週のトピックス
- ベネズエラのKFCがDASH決済を受付開始。(12/7)
- Coinbase、XRPやEOS等31種の新規上場を検討。(12/7)
- 米SEC、未登録の仮想通貨ファンドに業務停止命令。(12/7)
- Huobi、モスクワに新たに拠点を置き仮想通貨取引サービス提供へ。(12/8)
- IBM、アブダビ国営石油会社ADNOCと提携。(12/9)
- HTC開発の仮想通貨スマホに分散型ブラウザBrave掲載。(12/10)
- Gemini、モバイル版仮想通貨取引アプリを発表。(12/11)
- シュツットガルト証券取引所がSolaris銀と仮想通貨取引所開設へ。(12/12)
- UAEとサウジが両国間取引用の仮想通貨を共同開発。(12/12)
- Mt.Gox元代表に対して検察側が求刑10年。(12/12)
- 三井住友信託、ブロックチェーン用いた不動産取引の実証実験開始。(12/12)
- ソフトバンク、半導体大手NVIDIA株を売却か。(12/12
- PwCとBitfuryが提携しロシアでアクセラレーターを発足。(12/13)
- Opera、Android版Web3対応ブラウザを発表。(12/13)
- Binance、新たに5都市でインキュベータープログラムを開始予定。(12/13)
来週の相場予想
来週の相場予想
BTCは軟調な推移となるか。
RSI指標が引き続き低い水準で推移しており売られすぎとの見方に変わりはないが、積極的に買いに動くには目立った材料に乏しく上値の重い展開が継続すると思われる。
現在の相場は、投機筋が市場から離れ、ブロックチェーンの技術的ないし概念的価値を信仰する者によって維持されている印象がある。彼らはそもそも頻繁に売買をしない為、好悪の材料が出た時も市場の反応が薄い。その意味では、業界全体として再び個人投資家の興味関心を引く出来事が起きない限り、相場の大きな回復は見込まれないと言えるだろう。
引き続きBTC=35万円を割り込むかに注目である。
来週のトピックス
- CBOE先物 XBTZ18 最終取引日。(12/19)
業界関連動向
規制動向 オランダのDNBが仮想通貨規制導入を検討
12/11、オランダの中央銀行(DNB)が仮想通貨関連業者に対してライセンス制度を導入することを検討していると現地新聞社が報じた。
報道によれば、この規制により事業者のKYCやAML対策を強化し、不正取引やテロ資金供与を防止する狙いがある。実際に導入となれば、ライセンス取得業者はこれらの報告義務が課されDNBの監視下に置かれることとなる。
欧州では英国やドイツ、スイスにばかり注目が集まるが、オランダは隠れたブロックチェーン推進国の一つとして知られる。現地企業だけでなく他国とも連携しながら関連サービスやDapps開発に取り組む政府主導プロジェクトが進行しており、様々な業界へのブロックチェーン技術の応用が国家レベルで検討されている。
仮想通貨への友好的立場は依然変わらないと思うが、この報道が現実となればオランダでは初めての具体的な仮想通貨規制となる。
技術動向 ETH Constantinopleハードフォークの予定が決定
12/7、ETH開発者会議において、10月にテストネットでのコンセンサスバグを理由に延期されていたConstantinopleハードフォークを708万ブロックで実装することが決定した。目標まで約20万ブロック残されており、来年1月中旬頃が実装時期の目安となる。
今回のアップデートは、オペコードの改善やマイニング報酬減少(3ETH→2ETH)が主な内容となっており、ネットワーク処理能力を大幅に改善するものではないが、PoS移行に繋がるものとして業界では注目を集めていた。プラハで開催されたDevcon4では、Vitarik氏をはじめとする開発者の間で最終アップデートSerenityに向けたロードマップが再度議論され、その中でEthereum1.x計画が新たな話題に上がっている。
EOSの台頭もあり価格は低迷しているが、ETH界隈では取引処理やデータ管理の効率化に向けた開発が着実に進行している。
個別企業動向 Binanceが教育コンテンツを立ち上げ
12/12、業界大手取引所Binanceが仮想通貨やブロックチェーンに関する教育コンテンツを立ち上げた。
コンテンツはブロックチェーン、経済学、セキュリティ、チュートリアルの4つに区分され、それぞれではブロックチェーンの仕組みやトレード指標、資産の保管方法、そして取引所の利用方法などがイラストや動画を用いて効果的に説明されている。アルファベット順の用語解説集も備わっており、ユーザーはこれらを利用して業界知識を体系的に深めることができる。また、ユーザーは自分が知りたいコンテンツをHP上からリクエストすることも可能である。
国内でもこのようなコンテンツを提供する企業は一部見られるが、ユーザーがそれを頻繁に利用する程業界への興味関心が高いとは言えず、教育という観点ではコンテンツの内容以上にどのように利用を促す仕組みを作れるかが重要になると思われる。
コラム 情報消費文化を今一度醸成すべきである
最近のメディアを見ていると、一つ一つの情報がきちんと消費されないままゴミの山として後処理されているかのような感覚を覚える。インターネットの普及により情報量が人の処理能力を上回るようになったという見方もできるが、その原因はおそらく別にある。
それは人の情報の趣向がSNSの発展と共に変化してきたということだ。人は活きる情報以上に共感を呼ぶ情報を求めるようになった。つまり、個人ではなく集団を意識した情報を求めるようになったのだ。SNSは本来個人が自由に表現する場であるはずなのに、個々が無意識に集団に立脚してしまっているというのはあまりに滑稽である。私たちは中身のないスキャンダラスな情報よりも生活に活きた情報をもっと議論すべきではないのか。
仮想通貨で言えば、投資で儲けた損したの話ばかりが好まれ、その他の情報はほとんどの人が目もくれない。
株式会社Baroque Street アナリスト 松嶋 真倫(編集校正:マネックス仮想通貨研究所)