一見黒字でも「メタボ家計」な夫婦2人暮らしの支出内訳
「贅沢していないのに、お金が全く貯まりません」という人は、結構多いのではないかと思います。高級車やブランド品の購入など、高価なものに支出しているわけではなく、はた目には普通の生活をしているだけなのに、お金が残らないのです。
支出の仕方を見ても、突出した、目立つ「使いすぎ」の支出は見当たりません。ですが、往々にしてあるのは、どの支出も一般的な家計と比べてみると、多めの状態であるということ。知らず知らずのうちに、全体的に膨らんでしまっているのです。
例えば、「食材は安全な国産品を使いたい」と考え、スーパーの普通の商品ではなく、「少しだけいいもの」を選ぶ。明らかなぜいたくをしたいわけではなく、満足感を得るために、「少しだけいいもの」をどの費目でも選びがちで、支出を膨らませてしまうのです。こういった、支出が全体的に膨れ上がった家計を「メタボ家計」と呼んでいます。
病気でいうメタボリックシンドロームは、食生活の乱れや運動不足などの「不健康な生活習慣」の継続により、内臓脂肪がたまり、悪化すると様々な成人病につながるものです。実際にすでに生活習慣病が潜んでいる場合もあります。これを改善するには、不健康な生活習慣を改善させることが必要です。
「メタボ家計」も同様で、支出を増やしてしまう悪しき習慣が家計を蝕み、支出を膨らませます。時には、極端に悪い支出を抱え込んでしまっている場合もあります。そして、その家計の悪化を招く原因となっている支出の習慣を改善させなければ、改善はありません。
家計相談に来た専業主婦のAさん(53歳)の例を見てみましょう。Aさんは夫(55歳)の手取り収入の46万円のすべてを預かり、支出に43万円を使っています。一見すると黒字ですが、子どもは独立しているので、平均的な夫婦2人暮らしからみると、支出が多い印象です。
支出の仕方を見ると食費は10万円、水道光熱費も3万5000円ほどかかります。洋服代に3万円、交際費に2万円もかけていますし、その他にもちょっと支出が多めの費目がいくつかあります。このように少しずつ膨らんだ支出が合わさって、合計では毎月43万円にも膨らんでいるのです。完全な、メタボ家計と言えます。
こうした状況が分かっても、ご本人が、変えたい、変えようと思わなければ、家計は改善できません。減らしなさいと指導をすることで一時的に減ることがあっても、リバウンドしがちです。改善には本人の納得とか、変わりたい気持ちなどが大切になってくるのです。
改善したいという気持ちを持っていただくために、Aさんご夫婦と同様の一般的なご夫婦の支出状況をモデルに、支出の優先順位を提案してみました。すると次第に「できそう」「やってみる」という気持ちが起こるようになり、時間をかけながら少しずつ改善に向かうことができました。
「プチ贅沢」がいつのまにか外せない支出に
ただ、Aさんはうまくいきましたが、そのような方ばかりではありません。さんざんメタボ家計を続けてきて、貯蓄が十分にできなかったのに、老後生活に入るときに「生活費を工面できない」という問題にぶつかって、ようやく家計の改善の必要性を感じる人もいます。危機に直面しないと「変わらなければ、今後大変なことになる」と考えられないのです。
実際、危機を感じてからでは、遅すぎるという場合も多いものです。老後破綻などが目前で、生活費の圧縮をしながら、老後もずっと生活のために収入を得続けなくてはいけないという状態にもなってしまうのです。「もしかしたら自分もメタボ家計かも」と思ったら、早めに改善に向けて行動を起こしたいものです。
自分がメタボ家計なのかどうかに早く気が付けるように、メタボ家計の特徴を3つご紹介しておきます。
1.使うべきお金の優先順位が付けられない
特に収入が高い人が陥りやすいのですが、食費、教育費、住居費、通信費、いろいろな支出にお金をかけても支払うことができてしまうので、支出が膨らんでしまう。
2.ボーナスを月々の生活費補てんに使っている
毎月の収入を使い切り、赤字になるのでボーナスで補填。毎月の収入でやりくりできていないことを問題としていない上に、ボーナスも使い果たす傾向にあり、貯蓄をすることができない。
3.プチ贅沢なこだわりがある
産地直送・有機栽培・国産品の食材にこだわる、素材にこだわる、いつも使うものをたくさん買いだめするなど、少し支出が割高になっても、安心・安全を理由にその支出を良しとし、次第に「どうしても必要な仕方がない支出」としてしまう。
もしかしたら自分もそうかも、と思ったら、支出を把握し、支出の合計額が膨らんでしまう原因を考えてみましょう。そして、それが絶対的に必要な支出なのか、客観的に考えてみるとよいでしょう。