皆さんのご家庭では、どのように家計を管理しているでしょうか。昔は夫が稼ぎ、妻がやりくりするという、家計を1つにした管理方法が主流でしたが、最近は共働きが増え昔とは変わってきています。

家計相談をお受けしていると、昔に比べて「財布を別にして家計を管理しています」というご家庭が増えています。別々の財布で生活すると、自分の収入は自分で管理し、生活費は出し合う形で生活するという家計管理の方法をとるようになります。出し合う部分はどのようにしているのかというと、住居費は夫、食費は妻など費目別に担当を決めていたり、二人で毎月決まった額を出し合うという方法であったり。家計管理の方法も多岐にわたっているのです。

財布を別々に管理するという方法は、個人が尊重され、よい家計管理の1つなのかもしれません。ですが、これによる弊害が起きている家計をよく見かけます。

家計を別々に管理すると、「把握できない支出」が増えてしまうのです。

Hさんのご家庭の例を見てみましょう。Hさんご夫婦は夫(38)妻(35)で、互いに収入があります。妻が妊娠したので、今後は夫一人の収入で生活しなくてはいけない可能性もあるため、家計を合わせようと話し合ったそうです。

互いのお金のことは、毎月10万円ずつ出し合って生活してきたので「その金額は出せる」ということしか知りません。収入がいくらなのか、残ったお金はなにに使っているのか、貯蓄はいくらあるのか、そういったことは何も知りませんでした。

話し合って、驚きました。夫は毎月手取り32万円ほどもらっているのに、貯蓄はナシ。手元に残っているお金は飲み代や、趣味の車の手入れ代などに使い、毎月何も残っていない状態でした。貯蓄は妻がしているだろうと思っていたそうです。

そして妻は、手取り25万円ほどありましたが、共有の生活費を支払った残りは洋服代や化粧品代に使い、こちらもほとんど貯蓄がありません。夫が貯めているだろう、妻もそう思っていたのです。

こうしてHさんご夫婦は、貯蓄がほとんどないという状況が分かったのですが、改善するにはどうするとよいのでしょうか。Hさんご夫婦が希望されていたように、収入を1つに合わせ、二人でその使い道を話し合って決めていくこともよいでしょう。一人ではだらだらと使ってしまっていた部分も、話し合ってよりよい使い方が見えたら、優先順位を考えながら使うことがなるでしょうし、無駄遣いも意識して減らすことができるでしょう。収入源がたとえ1つになったとしても、その中でのやりくりも考えやすくなります。

ただ、Hさんご夫婦のように家計を合わせようと考えるご家庭ばかりではありません。やはり、財布は夫婦別々がよい、というご家庭もたくさんあります。そういう場合は、共有して管理できる部分を増やすということも効果があります。共有部分の使い道はご家庭により異なるでしょうが、生活費のほか、貯蓄額も含めて出し合うとか、そういった工夫が必要です。共有の生活費が増やしにくいという場合は、相手に見えないお金の使い道ができるだけ少なくなるように、報告しあうということも効果があります。お互いのお金について、クリアに、オープンにする方が良いのです。

お金についての話し合いを私は「家族マネー会議」と呼んでいます。互いの収支を報告し、そのお金の使い方がよかったのか悪かったのか、振り返ります。そして、欲しいものを購入してもよいかどうか、生活にどう役立つのかも含めて検討します。

このようにすることで、互いのお金の考えが分かるようになるので、家族内でお金遣いの方針が定まりやすくなります。家庭のお金について共通理解ができると、家計の運営の仕方も効率よくなっていきます。

まず、どこにお金をかけたいのかがはっきりしやすいですし、お金をかけるために絞らなくてはいけない支出も見えてきます。そうすると、1つの家庭としての支出のメリハリがつくようになり、貯めていきやすくなります。

このように、夫婦別々の家計管理は、うまくやらないと失敗しやすいのです。

うまく貯蓄ができるようになったら、前回お伝えした「3つの袋」のように段階を踏みながらお金を貯めて、増やしていくこともできるようになります。夫婦別財布で上手くいかないという人は、互いの状況を知らないことがその原因であると言えます。ぜひ、共有できる部分を増やすことをしてみてください。