本稿執筆時点の13日、午前の東京株式市場は一気にリスクオフの様相を強めている。外国為替市場で1ドル106円台割れ寸前まで円高が進行したこともあって日経平均の下げ幅は一時500円を超える場面があった。

今週は米国FOMC、日銀金融政策決定会合といった大きなイベントがあるが、市場はすでに来週の英国国民投票を警戒するモードに入っている。

FOMCや日銀会合などもそうだが、予想できないものを予想して、それに賭けるというのはただのギャンブルである。だが、今回のFOMCのように極端に見方が偏っている場合、予想通りの結果になれば織り込み済みで市場の反応は限られるから、その逆の目に賭けた場合、ダウンサイドはないということ - すなわち、その賭けの「期待値」はプラスだから、「期待値」がプラスのものに賭けるのはギャンブルではない、と述べた(6月6日付レポート)。

それに対して英国の国民投票はEU残留派・離脱派が拮抗しており、どちらに転ぶか皆目見当がつかない。フランク・ナイトがいうところの「真の不確実性」である。こういう場合は、相場から手を引くのが最大のリスクヘッジである。可能ならポジションは最大限軽くして、このリスクイベントをやり過ごすのがよいだろう。

それができない場合、なんらかのリスクヘッジを考えるべきである。

いちばん良いのは米国株の下落に備えるポジションだ。これはFOMCで予想外の利上げがあった場合のヘッジにもなる。S&P500は昨年7月に付けた史上最高値を再び視野に捉える水準まで上昇している。ここからのアップサイドよりダウンサイドのほうが目先は確率的に高いのではないか。

手軽にできる米国株のヘッジ手段はインバース型の商品を買うことだ。東証に、NEXT NOTES NYダウ・ベア・ドルヘッジ ETNという商品が上場している。ETNだが、ETF同様、株式と同じ感覚で売買できる。NYダウのベア型なので、NYダウが下落すればこちらの商品は値上がりする仕組みになっている(グラフ1)。

薄商いと膠着相場を映してボラティリティもようやく上昇してきた。元祖「恐怖指数」であるVIXに連動する商品もいいが(グラフ2)、より脆弱な - すなわち振れの大きい - 日本株のボラティリティ上昇に賭けるというヘッジ手段もある。同じく東証上場のETN、NEXT NOTES 日経平均VI先物指数 ETN(グラフ3)が取引できる。

より普遍的な安全資産、金のエクスポージャーを持つというのもオーソドックスなリスク回避手段である。金先物は一目均衡表の雲を抜けてきた。トレーディング妙味が出てきている。

さて、ここで紹介した資産への投資アイデアは、すべて英国の国民投票の結果が判明し、市場が反応するまでの間の短期的なヘッジ手段としての意味である。結果が出たら、ヘッジポジションは手仕舞って改めてポジションを組み直すのが定石であることを申し述べておく。くれぐれも長くひっぱらないように(特にVIX関連は短期のみ有効である)。