昨日(20日)、ドル/円の終値は辛うじて一目均衡表(日足)の「雲」上限を上抜けることとなりました。新発10年物国債の利回りが初めて0.1%台にまで低下したことや、本日(21日)の日銀金融政策決定会合で「何らかの追加緩和策が打ち出されるのでは」との思惑が一部で生じていることなどが主な要因と考えられます。とはいえ、昨日だけの動きで今後の行方を判断することはできませんし、日銀が追加緩和策を打ち出すとの見方は少数に限られている模様です。政策が「据え置き」となった場合には、再び円が買い戻される可能性もあるでしょう。

下図でも確認できるように、現在ドル/円の上方には21日移動平均線(21日線)が位置しており、同水準が当面の上値抵抗となる可能性もあります。このところ本欄では21日線と同線をベースにしたボリンジャーバンドの話題を取り上げてきましたが、その後の経緯を見てみると、やはりドル/円の価格推移と21日線との間には深い関わりがあることがよくわかります。また、昨年12月8日高値と以降の高値を結ぶレジスタンスラインのプレッシャーがドル/円の上方からかかっていることも見逃せません。

振り返れば、昨年(2014年)1月初旬から2月初旬にかけて、ドル/円がややまとまった調整を交えたとき(下図の赤色点線で囲んだ部分)も、日足「雲」上限を終値で一旦下抜けた後に幾度か終値で同水準を上抜ける場面は見られました。しかし、数日後には再び日足「雲」のなかに潜り込み、一時的にも日足「雲」下限が位置する水準まで押し下げる展開となったのです。当時も現在と同じように日足の「遅行線」が日々線を明確に下抜けた状態で、しばらくは21日線が上値抵抗として意識されていました。

20150121_tajima_graph.jpg

昨年10月に少々まとまった調整を交えたとき(下図の紫色点線で囲んだ部分)には、むしろ日足の「雲」がドル/円の下支え役として機能していましたし、日足の「遅行線」は日々線と絡み合いながらも、結局のところ明確に下抜けることはありませんでした。こうしたことからしても、昨年12月高値からの値動きというのは、昨年1月初旬から2月初旬にかけて(今から1年前)の調整場面によく似ているように思えます。

ここで再確認しておきたいのは、昨年2月初旬に100.75円でとりあえず下げ止まって反発したドル/円相場が、その後、かなり長い間に渡ってこう着状態を続けたということです。ようやく、その状態から抜け出したのは9月初旬のことであり、実に約7カ月もの間に渡って値幅に乏しいもみ合いの展開は続きました。もちろん、その間の下値は限られていましたが、同時に上値も重いという状況が続きました。

思えば、昨年1月初旬からのドル/円の調整は、アルゼンチンペソの急落に伴って新興国経済の先行き懸念が強まったことがきっかけでした。そして現在はロシアやギリシャ、ひいてはユーロ圏全域の経済の先行きが懸念されています。つまり、現在は1年前と似通った状況下で等しく調整局面を迎えていると言え、しかるに当面のドル/円相場はしばらくもみあいの展開を続ける可能性もあるものと思われるのです。

目先はECB理事会やギリシャ総選挙の行方が大いに気掛かりですが、それらの日程をこなした後に一旦はユーロが買い戻されやすくなる可能性もあります。結果、ドルの上値が全体に押さえられ気味になるかどうかといった点にも注目しておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役