最近、東京のお寿司屋さんがHOTな気がします。次々に新しい店が生まれ、或いは頭角を現し、中々の仕事を提供してくれます。ひと昔前は、ネタだけ勝負の「刺身御飯」の様なものが多かった気がするのですが、最近はきちんと仕事をした、立派な江戸前のお寿司を食べさせてくれるお店が増えています。江戸前寿司は隆盛を誇っている感がするのです。どうしてこうなったのでしょう?恐らく、偶々、40歳前後の腕のいい職人さんが何人かいて、しのぎを削り、成功したからではないでしょうか。

そしてそれを見た30代の職人さんも奮起して挑戦する。そう云ったいい循環が起きているのではないでしょうか。還暦を過ぎた名人だけが君臨していても、若い職人さんは成功までのあまりにも長い道のりに自信を失い勝ちですが、近い世代の先輩に成功例を複数見て、リスクとリターンの関係が一気に改善して感じられ、多くの挑戦が始まったのではないでしょうか。世代の活性化のこの仕組みは、他のビジネスにも共通する現象と思われ、中々興味深いものです。
但しひとつ気になるのは、刺身御飯全盛期のひと昔前のような、バブッた雰囲気や多くの欧米人が寿司屋に見られないことです。江戸前寿司は渋い雰囲気の中で栄えています。これは好ましく思う一方で、そこはかとない寂しさもあります。渋滞は嫌ですが、道が空いていると景気が心配になるように、日本文化の一端である江戸前寿司が静かに盛り上がっていることは、一方で日本の閉鎖性が進んでいることの裏返しにも思えて、一抹の不安があります。しかしこれは避けがたいトレード・オフかも知れませんね。