街を歩くと、今更ながらその豊かさに驚かされます。路面は極めてきれいに整備されていて、凸凹があるのをまるで恥とでも思っているかの如く、どこも滑らかになっています。それもその筈、毎年のように掘り返しては埋め直して整備の上に整備を重ねているからです。最近家の近くの道路が夜のあいだ数百メートルに亘って片側通行になっています。「低騒音化工事」をしているのです。通行量も少なく今でも静かなその街は、更に静かになることでしょう。街を歩いている人も豊かそうです。銀行や郵便局にはたっぷりの蓄えがあるからです。景気が悪いと言っても、当面は自分は何とかなると思っているようです。よく「日本経済は悪い悪いと言うが、この道路を見ろ、1400兆円の個人金融資産を見ろ、全然心配することはない」という論調がありますが、それは論点が逆立ちしていないでしょうか。これだけ道路にお金を掛け、これだけ個人が消費を控えてお金を貯めてしまえば、一般的な指標で計られる「経済」の部分にお金が回らなくて、「経済」が悪くなって当然です。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。