2026年2月に旧社名「ピュア・ストレージ」から改称
エバーピュア[P]は、エンタープライズ向けデータストレージおよびデータ管理プラットフォームを手掛ける企業。ストレージ機器で成長を遂げましたが、現在では、包括的なデータ管理プラットフォームへの進化を目指しており、2026年2月には、旧社名「ピュア・ストレージ」から現社名へ改めました。AI時代のデータ基盤に挑むストレージ企業として市場で注目を集めています。
顧客は全世界で1万4500社を超えており、Fortune 500企業の約64%、Global 2000企業の44%に同社製品が採用されています。
米調査機関ガートナーが2026年8月に発表したエンタープライズ・ストレージ・プラットフォーム部門のマジック・クアドラントにおいては「実行能力」で最高位、「ビジョンの完全性」で最上位を獲得。また、2025年の顧客推奨スコア(NPS)は、業界最高水準の84を記録しました。10年連続で80以上の高スコアを維持しています。
ハード×ソフト=統合データプラットフォームとしての優位性
製品は、大きく分けて、データを保存するストレージ装置(ハードウェア)、それらを制御する専用ソフトウェア、そして、機器を買い替えずに使い続けられる課金サービス(Evergreen)の3層で構成されています。
まず、ハードウェアの中心となるのが、企業の基幹業務データベースなどを支える「フラッシュアレイ(FlashArray)」シリーズと、膨大なデータを高速で並列処理できる「フラッシュブレード(FlashBlade)」シリーズです。特にフラッシュブレードの最上位モデルは、人工知能の計算を担うGPUへ滞りなくデータを送り届ける性能を備えており、生成AIの学習基盤や検索システムの構築において現在の業績を大きく牽引しています。
さらに、旧式のハードディスク装置を完全に置き換えることを目指した大容量・省電力モデルの「Eファミリー」も揃え、データセンターの電力不足に悩む企業から高い支持を集めています。
これらの土台となっているのが、独自技術の「ダイレクトフラッシュ(DirectFlash)」と、専用OS「ピュリティ(Purity)」です。
デル・テクノロジーズ[DELL]やヒューレット・パッカード エンタープライズ[HPE]など多くの競合は、市販の汎用SSDを調達して筐体に並べています。汎用SSDは1本ごとに内蔵のコントローラと大量のメモリを使い、データの管理を行います。これに対し同社は、そうした複雑なコントローラを持たない専用の「ダイレクトフラッシュ・モジュール(DFM)」を自社で設計しています。
そしてこのDFMを制御するのが、専用ストレージOS「ピュリティ(Purity)」です。各SSDが個別に担っていた管理をOSが装置全体でまとめて行うため、メモリや予備の容量を減らせます。同社によると、競合の全フラッシュ製品と比べて消費電力を最大85%削減し、ディスク型と比べて77%少ないスペースで済むとのこと。他社が容易に模倣できない物理的な競争力となっています。
こうしてハードウェアが動く一方では、企業全体のデータ管理やクラウド連携を担うソフトウェアが提供されています。ソフトウェアとして、稼働状況をクラウド上で監視し、故障の兆候を事前に検知する「ピュアワン(Pure1)」、データ管理を自動化する「ポートワークス(Portworx)」、複数のストレージ装置をまとめて容量の配分を最適化する「エバーピュア フュージョン(Everpure Fusion)」、企業内データの探索・分類・統制を行う「エバーピュア・データ・インテリジェンス(Everpure Data Intelligence)」などがあります。
このように、主要なストレージ機器群は共通の「ピュリティ(Purity)」を土台としつつ、専用ソフトウェアを組み合わせることで、オンプレミスからマルチクラウドまでを包括する統合データプラットフォームとしての優位性を築いています。
顧客メリットの大きいSTaaSでサブスクリプション型収益基盤確立
一方、提供方法においては、「エバーグリーン(Evergreen)」というサブスクリプション型での提供が顧客の支持を集めています。「エバーグリーン」は、2015年に、装置購入後の更新を部品交換のみで継続できるサブスクリプション型プランとして始まりました。従来のエンタープライズストレージ業界では、顧客は3年から5年ごとに機器全体を買い替え、膨大な時間とコストをかけてデータを移行する更新作業を余儀なくされていました。これに対して同社は、業務システムを停止させることなく、コントローラや記憶媒体などの部品のみを順次最新世代へ刷新できる仕組みを構築したのです。
この思想は拡張され、2018年には装置を購入することなく、実際に使用したデータ容量に応じた月額料金のみを支払うクラウド型の契約モデル、いわゆるストレージ・アズ・ア・サービス(STaaS)「エバーグリーン・ワン(Evergreen//One)」を投入しました。顧客は、高額な装置を買う必要もなく、保守や部品交換などの運用管理も行う必要がありません。それでいて最新の性能を享受できるためメリットは大きく、乗り換えの起こりにくい競争力となっていると言えます。
成長するサブスクリプション型収益
現在、エバーグリーン・ワンをはじめとするサブスクリプション型収益は、売上高の4割を占めるまでに成長しています。2026年度(売上実績36億6000万ドル)においては、製品売上が54%、サブスクリプション売上が46%を占めました。サブスクリプション型収益は拡大傾向が続いており、足元2027年1月期第2四半期においてARR(年間経常収益)は21億3368万ドルと前年比で20%増となりました。
また、ストレージ・アズ・ア・サービス(STaaS)の四半期受注総額(TCV)は2億7700万ドルと前年から2倍以上に拡大しています。残存履行義務(RPO)も44%増の40億8900万ドルと拡大しており、将来の経常収益基盤は確実に拡大しています。サブスクリプション型収益の粗利益率は74.9%と高く、売上基盤の拡大とともに利益の成長の勢いが増していくことが期待されます。
中長期的見通し:ハイパースケーラー開拓、AI向け進展で明るい
中長期的な見通しも明るいです。まず、事業環境には、データセンターの電力不足や設置スペースの限界といったボトルネックが省電力化と省スペース化を実現する同社の追い風となっており、ハイパースケーラーの開拓とAI向けの展開が進展しています。この8月には、世界トップ5に入るハイパースケーラーの2社目から製品設計の正式採用を獲得し、供給契約を締結しました。今期の寄与は小さいものの、2028年度以降、数十エクサバイトという桁違いのデータ需要(今期予想の数倍)を担う道筋が立った意味合いは非常に大きいと言えます。
AI向けでは、計算を支えるストレージとしてフラッシュブレードの需要が加速しており、サムスン電子が人工知能研究基盤に採用したほか、大手銀行やサービスプロバイダー各社で導入が進んでいます。このほか、エヌビディア[NVDA]のAIデータ基盤をベースにした「エバーピュア・データ・ストリーム(Everpure Data Stream)」の一般提供が今四半期に開始され、初の販売がありました。
また、5月にはデータインテリジェンス技術を持つ1touch(ワンタッチ)を買収し、社内に散在するデータを探索・分類しAIに最適化する機能を強化しました。ソフトウェアのデータ管理領域への拡張は、単なる機器ベンダーにとどまらない総合プラットフォームへの転換を推し進める力となります。
安定成長のキャッシュ創出力と健全財務
同社のキャッシュ創出力は安定的で、営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローともにプラスで推移してきましたが、この第2四半期は、営業キャッシュフローはマイナス1億3630万ドル、フリーキャッシュフローはマイナス2億3760万ドルと一時的な赤字へ転落しました。キャッシュフローがマイナスになった理由は、世界的な半導体の供給逼迫や価格高騰を警戒し、需要を確実に満たすためにフラッシュメモリなどの主要部材を先行調達した結果、運転資本が急激に膨らんだためです。ただ、これも今後2四半期で正常化する見込みで、通期のフリーキャッシュフローは6億~8億ドルの黒字となる見通しです。なお、TTMベースでは1億2817万ドルのフリーキャッシュフローを創出しています。
ただし留意すべき点としては、2027年暦年末までに約11億ドル規模の部材を購入する長期供給契約の義務が発生していることです。万一ハイパースケーラー側の需要予測が下振れた場合は在庫負担を抱え込むリスクがあり、先行投資が計画通りに出荷と代金回収に結びつくかが注目されるところとなります。
一方、財務状況は健全です。第2四半期末時点で、現金および現金同等物3億8569万ドル、短期投資6億2219万ドル、合計10億800万ドルを保有しており、手元流動性は十分。有利子負債はありません。
自社株買いによる株主還元
同社は成長投資を最優先とし、自社株買いを通じて株主に利益を還元しています。第2四半期は93万2000株、約6900万ドルの自社株買いを実施しました。なお従業員への株式報酬に伴う源泉徴収税として7400万ドルも納付し、約100万株の希薄化を相殺しています。進行中の自社株買いプログラムでは、あと約1億7600万ドルが残されており、株価の下支えとなることが期待されます。
株価は、特に第2四半期の業績発表から力強く上昇しています。年初来で2.3倍、この3ヶ月だけでも1.5倍になっています。なお、空売りは浮動株の2.15%と少なく、売り方の買い戻しではなく、買いの厚さによる上昇と見ます。9月8日にS&Pに採用されると発表されたことも買いを呼んだのでしょう。急上昇してきただけに、20日線からの乖離率は+28%、200日線からは+91%に達し、14日RSIも82と過熱圏にあると言えます。バリュエーション面はやや過熱感があるものの、利益成長を加味するとPEGレシオに割高感はありません。
結論として、中長期の成長軌道は期待感が高いものの、短期的には過熱感がある局面と言え、魅力的と思える場合は、押し目での購入を検討しても良い銘柄ではないかと思います。
