〇人工知能(AI)モデル開発のオープンAIは10月5日、ChatGPTにビジュアル広告フォーマットを導入すると発表しました。今回の試みはオープンAIにとって新たな収益機会を広げるだけでなく、広告主にとっても、消費者が商品やサービスを探したり、意思決定を行ったりする過程でアプローチする新たな手段となる可能性があります。この広告フォーマットは、米国における一部の広告主を対象に10月後半からテストとして開始される見通しです。

〇オープンAIは同時に、ChatGPT広告の効果測定を拡充する方針も明らかにしています。自社開発と外部パートナーの双方による測定をサポートし、広告主が普段利用しているシステムでChatGPT広告のビジネスに対する貢献度を把握できるようにする考えです。これまで実施された調査では良好な成果が示されています。例えば、ある健康関連企業に関する調査では、ChatGPT広告に帰属する顧客獲得単価が検索連動型広告全体の基準値を15.3%下回ったとの報告があります。また、革製品を手掛ける企業ではChatGPT広告経由で訪れたユーザーの93%が新規訪問者だったとされています。ただ、これらは初期段階の調査結果であり、広告全体の効果を示すものではない点には留意が必要です。

〇今回のテストは画像生成中の表示から始まる予定で、検索のような広範な広告領域に広がるには時間を要する可能性があるものの、広告市場の構造を変える起点となり得る点に注目したいところです。消費者が商品やサービスを探す際には複数の入口が存在しますが、なかでも検索エンジンでは、消費者が入力したキーワードに応じて広告を表示し、企業と消費者をつなぐビジネスモデルが構築されています。今後はここに、「ChatGPTに相談する→AIが選択肢を提示する→商品やサービスを知り、比較・検討する」という新たな導線が加わる可能性があります。ChatGPTは世界最大級の消費者向けAIサービスであり、毎週12億人が利用しています。この巨大な利用基盤を広告主への新たな接点として活用できれば、広告媒体としての存在感が高まる余地があります。

〇当然ながら、検索関連企業の多くは広告以外にも幅広い事業を展開しており、これだけで既存ビジネスが立ち行かなくなる、ということではないと考えます。ただ、広告費という一つの商流の担い手が変わることは、企業の中長期的な成長性を考えるうえで重要な変化点になり得ます。機関投資家が企業分析で構造的・長期的な「追い風」や「逆風」を重視するのも、こうした変化が一時的な景気循環とは異なり、企業の収益構造そのものを変える可能性があるからでしょう。

〇AIの普及はこれまで、業務効率化や生産性向上といった側面から語られることが多くありました。しかし、今回の広告市場への展開は、AIが既存企業のビジネスモデルを変え得ることを示す一例かもしれません。AIは単なる新しいITサービスではなく、検索や広告など、これまでインターネットが築いてきたビジネスモデルを再編する「破壊的イノベーション」になっていくのか。今後の企業分析では、こうした視点も重要になりそうです。