ベッセントの真の狙いは「高市リフレ」のけん制か

第2次安倍政権の経済政策であるアベノミクスは、大胆な金融緩和、機動的な財政政策など「3本の矢」で構成されたリフレ政策と理解されている。そして高市政権は、その継承を掲げ、実際にこれまで日銀の利上げをけん制し、積極財政を目指してきた。

その意味では、今回のベッセント長官の「リフレ政策であった『アベノミクス』はおそらく終わりを迎えたと考えている」という発言には、間接的な表現ながら、実際には「高市リフレ」政策へのけん制が真の狙いだったと考えられる。

「トラス・ショック」再来の「高市ショック」を懸念

ベッセント長官はこれまでも、日銀に利上げを要請したとみられる発言を繰り返してきたが、日本の財政政策についての具体的な言及はほぼ確認されなかった。ただ本音では、高市政権の財政政策にも強く懸念を抱いていたようだ。

「高市首相はこのままではトラスになるか、メイになってしまうのではないか」。ベッセント長官は、1月にスイスのダボスで行った片山財務大臣との非公式会談でそう発言したと一部メディアが報じた。

ここでの「トラス」とは、財源が曖昧なままの減税策を発表したことをきっかけに通貨、債券、株のトリプル暴落、「トラス・ショック」を引き起こした英国の首相を指す。その意味では、ベッセント長官による高市政権の積極財政に対する懸念は、すでに「公然の秘密」のようになっていたわけだ。

「高市リフレ」へのけん制、きっかけは協調介入か

ただ高市総理は、消費税減税を公約にするなど、高市政権における「責任ある積極財政」の政策上の優先度は高く位置づけられてきた。その財政政策を批判することは、高市政権の基盤を揺るがす可能性があることから、ベッセント長官もそこは意識的に配慮してきたのだろう。

そうした中で今回、「リフレ政策であった『アベノミクス』は終わりを迎えた」という表現でありながら、普通に読めば積極財政を目指す「高市リフレ」へのけん制と受け止められる発言を行ったのは、円安阻止に向けた日米協調介入がきっかけだったのではないか。

円安阻止への関与を強めたことで「対日干渉」強化へ

ここ最近の円安は、日本の長期金利上昇と連動してきた(図表参照)。その背景には、高市政権の積極財政が財政規律への懸念として債券売りや円売りにつながっていることがあるだろう。

【図表】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「トラス・ショック」の再来となる「高市ショック」をかねてから懸念していたとみられるベッセント長官は、為替介入や日銀利上げだけで円安の流れを変えるのは難しいことを基本的には理解していたと考えられる。

その上で、協調介入を行うことで、これまで以上に円安阻止に関与したことから、日本の政策に対する要求、別の言い方をすれば「対日干渉」も、これまでの金融政策にとどまらず、高市政権の経済政策の「本丸」でもある財政政策にも広げ始めた可能性がある。