戦争60日ルール=4月末までにトランプ氏は議会の同意を得られるか
米国には、大統領が議会の事前承認なしに軍を戦闘状態に投入できるのは最大60日間までとする「戦争60日ルール」がある。60日が経過するまでに、議会が戦闘継続を承認する、もしくは正式な戦争宣言を行うなどの形で同意しない場合、原則として、大統領は軍を撤退させなければならない。
この60日ルールは、「戦争権限法(War Powers Resolution, 1973年)」と呼ばれる法律の一部。これに従うなら、今回のイラン攻撃の開始が2月末だとして、60日後の4月末には、トランプ米大統領は議会の戦闘継続への同意が必要になり、それが得られない場合は、軍の撤退を余儀なくされることになる。
4月末までにイラン危機収束へ=5月以降の危機悪化の可能性は低いか
では、トランプ米大統領は議会からの同意が得られるだろうか。トランプ米大統領のこれまでの言動を見ると、これは戦争ではなく、あくまで限定的な軍事行動だとするなど、議論をすり替えることより法律の適用外として強行突破する可能性も十分ありそうだ。
ただ最近の動向を見ていると、トランプ米大統領自身が本音ではこのイラン危機から早く手を引きたいと考えているようにも感じられる。そうであれば、「60日ルール」の期限が近づき下手に議会との対立が注目されるようになる前に、イラン危機の収束を急ぐというのが最もありそうなシナリオではないか。
一方、議会の同意も得たうえで、5月以降もイランへの攻撃を激化させるという「イラン危機の悪化シナリオ」は常識的に考えたら可能性が低く、イラン危機は4月末にかけて、米軍の撤退などにより、基本的に収束に向かう可能性が高いのではないか。最近、金融市場がイラン危機に一喜一憂しながらも、基本的には原油安、株高、米ドル安への反応が優勢になったのも、大きな方向性としてそうしたイラン危機の収束を先取りしたということだったのだろう(図表参照)。
原油本位制「イラン相場」の転換=原油高長期化の悪影響に注目か
これまで見てきたように、4月末にかけてイラン危機が収束に向かった場合、金融市場はどう反応するか。イラン危機で広がった原油高・株安・米ドル高が、危機の収束により原油安・株高・米ドル安になるかと言えば、そこまで単純ではないかもしれない。
原油高については、イランによるホルムズ海峡封鎖に伴う供給不安だけが理由ではなく、米国、イスラエル、イランによるエネルギー施設への攻撃によって生産力の回復が遅れる影響も重なっていると見られるため、イラン攻撃開始前のWTI60米ドル台まで戻るのではなく、原油高が長期化するとの見方が有力だ。
そもそも原油高・株安・米ドル高という原油相場が動向に株や為替が反応する「イラン相場」はイラン危機の中で起こったものであり、危機以前に原油相場が株や為替に与える影響は限られたものだった。その意味では、イラン危機の収束は原油価格本位制のような「イラン相場」の転換と考えるのが基本だろう。もしも原油高長期化の見通しが確認されるようなら、米国を始めとした世界経済への悪影響が、株や為替の材料視されるように変わっていく可能性が高いのではないか。
