2つの大暴落:1998年の米ドル/円、2008年の豪ドル/円
1998年10月3営業日で米ドルの最大下落幅は約25円
1998年は8月まで「止まらない円安」が展開していた。6月には、円安ストップの「最後の切り札」である日米協調米ドル売り介入が実現したものの、それでも円安は止まらなかった。多くの人たちがすぐの円安終了をあきらめ、一体円安はあと何年続き、日本経済はどうなってしまうかと思い始めていた。このような感覚は、2024年7月に161円で円安が一段落する前に似ていたかもしれない。
結果的に、この1998年の米ドル高・円安は8月の147円で終わった。そして10月には130円台半ばまで10円以上、米ドル安・円高へ戻っていた。ところが、比較的大きく米ドルが下落したにもかかわらず、ある大手ヘッジファンドが米ドル買いポジションで巨額の含み損を抱えたままになっているようだとの噂が広がった。このポジションの損切りで米ドルの処分売りが大量に行われたら米ドルは暴落するのではないか、との懸念が広がる中で実際に米ドルの大暴落が始まったのだった。
1998年10月6~8日までの3営業日で、130円台半ばから110円割れ近くまで、米ドルの最大下落幅は25円近くにも達した。特に最初の2日間は、1日で10円程度の米ドル暴落が続くという記録的な大相場となった(図表1参照)。
2008年10月は豪ドル/円の暴落が米ドル/円の下落を上回った
2008年10月は、「リーマン・ショック」が起こったタイミングとして知られているだろう。ここでは米ドル/円も大幅な下落となったが、それを上回る大暴落を演じたのが豪ドル/円だった。
10月の豪ドル/円は90円近い水準での取引スタートとなったが、月末にかけて50円台まで何と30円以上もの大暴落となった(図表2参照)。折しも中国を始めとした新興国の台頭でBRICs時代とされたこと、そして原油価格が一時150米ドル近くまで急騰したこともあり、豪州の金利は大きく上昇し、高金利通貨の豪ドルは日本のFX投資家の人気通貨となっていたことから、この大暴落の影響はかなり大きかった。
為替2つの「10月暴落」の共通点
1998年の米ドル/円、2008年の豪ドル/円という代表的な為替の「10月暴落」について振り返った。この2つのケースに共通するのは、暴落が始まる前まで、5年MA(移動平均線)かい離率などで見ると記録的な「上がり過ぎ」だった点が挙げられる(図表3、4参照)。
以上のように見ると、始まりは「上がり過ぎ」の反動だったのだろう。それが様々なきっかけで加速した結果、記録的な大暴落になったという点は、2つのケースに共通していることではないか。