トレンド(継続的な動き)と一時的動きの見極め方

最近、52週MA(移動平均線)分析への質問をとても多く受ける。これは、次の大きな関心が最近の円高への動きは一時的に過ぎないのか、それともすでに複数年続く円高、つまり円高トレンドへ転換したかということであり、その見極め方法として私が52週MAを参考にしているためだろう。

2023年1月にかけて127円まで、そして2023年12月も140円まで米ドル/円は比較的大きく反落した。さすがにこれだけ米ドルが下がったらもう円安は終わったと感じた人は多かったのではないか。ただ、この米ドル安・円高は52週MA前後までで止まっていた(図表1参照)。これは、経験的には円安トレンドの中の一時的円高に過ぎない動きだった。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

これに対して今週にかけての米ドル暴落で52週MAを大きく割れるところとなった。少なくともこれまでのところでは、2023年1月や2023年12月とは明らかに違う動きと言ってよいだろう。週足は週末終値を使うので、今週末にかけて52週MAとの関係が変わる可能性はあるものの、このままなら2021年から続いてきた円安トレンドで初、つまりトレンド転換の示唆の可能性となる。

トレンドとは複数年続く動きという意味だ。それと逆行するのは一時的動き。以上から52週MAでトレンド転換の可能性が高まった場合は、7月161円から複数年続く円高が始まっている可能性が出てきたという意味になる。

そして、米ドル安・円高トレンドへ転換したということなら、今度はそれと逆行する一時的な米ドル高・円安は52週MAを大きく、長くは越えない程度という見通しになる。この場合の「大きく」とは最大で5%以内、「長く」とは最長で1ヶ月以内というのが目安になる。

過去実績を参考にすると、円高トレンドは普通2年以上続き、その中で米ドルは2割以上下落するのが基本のようだ(図表2参照)。7月161円から円高トレンドが始まったとしたら、それは2026年にかけて続き、その中で米ドル安・円高は120円を目指すというシナリオが基本になるだろう。そのシナリオがすでに始まっているのか、それともまだなのか。それを少しでも早く見極める手掛かりとして、52週MAを参考にするということだ。

【図表2】米ドル/円の推移(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成