お盆でふるさとに帰省して久しぶりに親に会うと、同じ話を何度も繰り返すなど、いつもと様子の違う親を見て、認知症の不安を感じる人が増えます。

特に、親と離れて暮らしていると、仕事や家庭の都合を優先してしまい、つい親の様子を見に行くのを先送りしがちです。今回はお盆という貴重な機会を生かすために、お盆期間中に見つけやすい認知症の3つのサインをご紹介します。

サイン1.お盆の準備をきちんとできるか?

親はお盆の準備を、昨年と同じようにできているでしょうか? 

例えば仏壇に供えるお線香やろうそく、花の準備はできているか、仏前に備える精進料理を昨年と同じように作れるか、お墓のある場所を把握できているかなどを確認してみましょう。昨年と比べて、お盆の準備の抜けや漏れが多くなっていたら、認知症のサインかもしれません。

またお盆期間中に、故人について話してみるのも良いと思います。いつ故人が亡くなったのか、お通夜やお葬式の思い出、次の命日で何回忌になるかなど、親が話す内容に間違いがないか確認してみましょう。

私自身の経験で言えば、認知症の母の症状が軽度の頃は、こうしたお盆の準備はすべてできていました。しかし、症状が進行するにつれ、何を準備したらいいのか、お盆はいつから始まるのか分からなくなってしまい、代わりに私がお盆の準備をするようになりました。

サイン2.孫に「お盆玉」をきちんと渡せるかどうか

子どもを連れて実家に帰省する場合、親が孫へ「お盆玉」を渡すこともあると思います。お盆玉とはお盆に渡すお小遣いのことで、お正月に渡すお年玉の夏バージョンです。

まずは親が、孫にお盆玉をきちんと渡せるか確認しましょう。例えば孫が小学生か、中学生か、親は理解しているでしょうか? 小学生の孫なのに、高校生に渡す金額のお盆玉を渡していないでしょうか? 昨年のお盆玉の金額と比較して、大きな乖離はないでしょうか?

他にも毎年孫に渡していたお盆玉を用意し忘れるとか、孫の存在をすっかり忘れているようなら、認知症のサインかもしれません。

サイン3.親の財布の中に大量の小銭が入っていないか

お盆に限った話ではないのですが、お金にまつわる認知症のサインをご紹介します。

認知症の人の特徴として、財布に小銭がパンパンに入っているというサインが見られます。小銭がいっぱいになる理由は、認知症になると計算ができなくなるからと思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。

認知症がまだ軽度のうちは、お金の計算ができる場合が多いです。それなのに小銭がたまってしまう理由は、お金の計算に時間がかかってしまい、スーパーなどでレジ待ちをしている他のお客さんに迷惑がかからないよう、お札で支払うようになるからです。

毎回お札で支払いをすると、小銭がたまっていきます。認知症の母も自分で買い物をしていた頃は、いつも財布が小銭でいっぱいだったので、私が帰省したときにお札に両替していました。

こうした認知症の人の特徴を受け、一部の小売店では認知症の人がゆっくり会計できるよう、専用レーンや専用レジを設けているところもあります。

実家に帰って、親の財布を見せてもらうのは難しいと思うので、「今から買い物に行くけど、ちょっと小銭が足りないから、100円貸してちょうだい」などと声掛けをして、さりげなく親の財布の状態を確認してみましょう。

また、お盆だけでなく、次に実家に帰省するお正月などにも財布の状態をチェックして、定期的に認知症のサインが現れてないか確認してみてください。

1年に1度のお盆だからこそ認知症に気づきやすい

お盆は1年に1度なので、久しぶりにやるべきことが増える時期です。毎日こなしている家事などと違って、1年前の記憶をきちんと思い出せないと準備できません。親はたまにしかやらないことをしっかり覚えているか、そういう視点でチェックしてみましょう。

久しぶりに会う子や孫のために親が張り切りすぎて、認知症のサインが現れにくいケースがあります。いくら家族といえども、子や孫をお客さんのように扱ってしまうので、いつも以上にしっかりしないといけないという気持ちが働くためです。

ものわすれ外来を受診して認知症のテストをすると、家では認知症の症状がでるのに、病院ではしっかりしないといけないという気持ちが働いて、症状が現れないことがよくありますが、その状況に似ています。

以前、本コラムで執筆した「親の認知症、年始の今こそ確認しておきたい2つのサイン」という記事では、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いや、親の認知症を疑っても病院に簡単に連れていけない理由、病院に連れていくまでに子がやるべきことを紹介しました。

適切な医療、適切な介護に早くつなげることで、認知症の進行を食い止められます。ぜひ今回の記事と合わせて、参考にしてみてください。