2024年6月はビットコインが大きく下落しBTC=1,000万円台を割り込んだ。この売り圧力の原因として考えられているのが、ビットコインの大口保有者アドレスの動向である。ブロックチェーンはいわば公的なデータベースであるため、特定のアドレスが大きな資産を動かした際には、その動きを市場関係者がすぐに検知することができる。

直近では、2014年に破綻した暗号資産取引所マウントゴックスが2024年7月から債権者への弁済を開始すると発表し、ビットコインおよびビットコインキャッシュの売り圧力が警戒されている。これらの総額は現在レートで1兆円規模になるとみられており、全てではないにしても相当量が市場で換金される可能性がある。

また、各国政府が犯罪等で押収したビットコインを売却する動きも懸念されている。ドイツ政府は、2024年6月に入ってからコインベースやクラーケンといった取引所アドレスへビットコインを入金し、保有分を段階的に換金している可能性が指摘されている。さらに米国政府に関連したアドレスからの資金移動も確認されており、シルクロード事件で押収したビットコインの売却が進む恐れがある。

これらに加えて、マイナーによるビットコインの売りが強まっているとも言われている。2024年4月の半減期以降、ビットコインの新規発行量が減少し、マイナーの収益性が低下している。ビットコインの価格が下がれば、法定通貨建てで見る利益はさらに少なくなり、その中で中小規模のマイナーが撤退する動きも増えるだろう。こうした中、マイナーが保有するビットコインの量は2010年以来の最低水準まで減っている。

マウントゴックス、各国政府、マイナーなど大口保有者アドレスの動向をリアルタイムで追えるというのは、ビットコインなど暗号資産の良さであり、怖さでもある。特定のアドレスからの資金移動が売却目的ではなかったとしても、相場トレンドによっては、市場が過度に売り圧力を意識してしまうこともあるだろう。まさに今はそのような状況であり、「資金移動≒売却される(かもしれない)」という曖昧かつ短期的な情報に振り回されないように注意したい。