5年MAかい離率は空前のメキシコペソ「上がり過ぎ」を示唆

メキシコペソ/円は先々週、最大で3%以上も急落する場面があった(図表1参照)。メキシコが通貨安阻止策を段階的に縮小する、との報道がきっかけになったとの理解が一般的ではないか。

【図表1】メキシコペソ/円の日足チャート(2023年6月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

こうした中で、一時プラス10%を大きく超えるまで拡大したメキシコペソ/円の90日MA(移動平均線)かい離率は、5%を下回るまで縮小した。これは、経験的には短期的なメキシコペソ/円の「上がり過ぎ」修正が進んだといった意味になりそうだ(図表2参照)。

【図表2】メキシコペソ/円の90日MAかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

メキシコペソ/円は、2020年の「コロナ・ショック」後には4円割れ寸前まで下落した。それが、最近は8円を大きく上回るまでの上昇となった。3年余りの期間で、メキシコペソ/円はほとんど倍になったわけだ。

加えて、日本とメキシコの間にはメキシコ優位で大幅な金利差がある。金利面で圧倒的に有利なメキシコペソの記録的な値上がりは、メキシコペソ買いトレードの場合、大きな収益をもたらした可能性があった。その意味では、FXトレードにおいても「最強通貨ペア」といった位置付けとなっていた。

ただし、記録的なメキシコペソ/円の上昇により、当然のように過去5年の平均値である5年MAかい離率は記録的な「上がり過ぎ」を示すようになった(図表3参照)。では、それでもメキシコペソ/円の上昇は続くだろうか。

【図表3】メキシコペソ/円の5年MAかい離率(2006年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

メキシコペソ/円のこれまでの上昇は、米ドル/円の上昇トレンドに支えられ、その上で米ドルなど主要な外貨の中で飛び抜けて金利が高いといった相対的な優位性が、メキシコペソ/円の買いが増えた結果ではないだろうか。

上述のように、先々週メキシコの中央銀行が通貨安阻止策の段階的な縮小を検討しているといった報道が流れると、メキシコペソ/円は急反落する場面があった。これは、あくまで短期的な「上がり過ぎ」の反動だったのか、それとも中長期的なメキシコペソ「上がり過ぎ」修正の始まりなのかの見極めが、当面の為替相場の行方を考える上での注目点となりそうだ。