マネックス証券では、資産承継や相続対策をテーマとしたオンラインセミナーを多数実施しており、参加者からの質問に回答するコーナーを設けています。今回は、不動産の相続や遺産分割協議についての質問をいくつかご紹介します。様々な質問をいただいていますので、参考になるケースがあるかもしれません。

Q:分割協議時の不動産評価額の考え方

実家を2名で相続するのですが、遺産分割協議では評価額をどの基準にするべきでしょうか。

回答

これでなければならないといった基準はありませんが、相続税の評価額を基準にするケースが多いように思います。また、固定資産税の評価額を使われる方もいますし、参考程度に不動産業者へ査定してもらう方もいます。大きく揉めた場合はそれぞれの相続人が不動産鑑定士に依頼し、その鑑定評価の平均を基準にするケースもあります。

Q:相続時精算課税の考え方

土地の贈与において相続時精算課税制度を活用する場合、相続税計算時の土地は贈与時・相続時どちらの評価額が基準になりますか。相続時の価格が採用されるのであれば、死亡時に地価が上昇していた場合、メリットがないのでは…と思います。

回答

相続時精算課税制度を使って贈与した財産は、贈与時の金額で固定され、相続時に計算されます。よって、贈与後に価値が上がったのであればメリット、価値が下がったのであればデメリットになるケースもあります。 なお、2024年より、贈与を受けた土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合は、相続税の計算において評価額を再計算することができるようになります。

Q:不動産相続、「換価分割」と「代償分割」どちらがよいか

不動産を相続するのですが、換価分割と代償分割どちらがよいのでしょうか。

回答

ケースバイケースですが、相続人が今後も住み続けるであれば代償分割、もう誰も住む予定がないのであれば換価分割といったように、その不動産が必要かどうかで考えてみるとよいと思います。

・代償分割:特定の相続人が不動産などの財産を現物のまま相続し、取得した代わりに他の相続人に対して見合った代償金を支払うことで調整する方法。
・換価分割:不動産などの相続財産を売却し、その代金を各相続人で分ける方法。

Q:遺留分侵害額請求について

父が亡くなり相続人は私と弟の2人です。遺言書がありますが、弟が生前に父の世話をしていたこともあり、ほとんどの財産を弟が相続するように記載されています。この割合に納得がいかない場合、弟に法定相続分を請求することはできますか。

回答

不利になった側は、有利になった側に対し、遺留分侵害額請求をすることができますが、法定相続分の割合ではありません。遺留分として保障される割合は、相続人が子の場合、法定相続割合の2分の1です。そのため、今回のケースで請求できる遺留分の限度は法定相続分の4分の1ということになります。

Q:不動産の相続について

母名義で数十年前に当時9000万円で建てた家に、妹が当初から1人で住んでいます。母が亡くなった場合、妹はその家をそのまま相続することになりますが、私は代わりに現金で9000万円をもらえますか。

回答

不動産は当時の価格ではなく、現在の価値に換算して計算するのが合理的です。土地は価格があまり変わらない場合もありますが、建物は減価します。そのあたりを考慮した上で話し合う必要があると思います。

Q:遺産分割協議がまとまらない場合の対応策は

父親が亡くなり一次相続中です。母は施設に入居しているため、兄が財産の管理を行っていますが、遺産分割について話し合ってくれません。私が分割方法などを提案しても怒るばかりで話し合いに応じてくれず、困っています。何かよい対応策はないでしょうか。

回答

遺産の分割について相続人の間で話し合いがつかない場合、家庭裁判所での調停を利用することができます。なお、調停でも話し合いがまとまらない場合は審判手続が開始され,裁判官が審判をすることになります。

まとめ:
今回は遺産分割についての質問を多く紹介しましたが、遺産分割協議では財産額に関わらず、家族同士で揉めてしまうことも少なくありません。自分の家族は仲が良いから大丈夫と思っていても、思わぬことでトラブルになるケースも見られます。相続で揉めるリスクを減らすためにも、事前に家族で話し合い、それを記録する、あるいは遺言書を作成しておくなど対策が肝要です。