大統領選挙後に暴落再燃のトルコリラ
大統領選挙中1リラ=7円近辺で推移していたトルコリラ/円は、先週は5.6円程度まで、最大で2割もの下落となった(図表1参照)。トルコリラは、2021年12月にも暴落したが、そこで記録した安値も更新するところとなった(図表2参照)。
このようなトルコリラ暴落再燃のきっかけは、通貨管理システム見直しを巡る思惑といった指摘が多い。そもそもトルコリラ/円は2023年に入ってから半年近くも7円近辺での小動きが続いていたが、これは政府などによるトルコリラ買い支えの影響が大きかったとの見方が基本だった。ところが、再選したエルドアン政権では、そうした通貨管理を見直すとの思惑が浮上し、これまでのところトルコリラ暴落再燃となっている。
大統領選挙後の2週間でトルコリラ/円が約2割もの暴落となったことで、90日MA(移動平均線)かい離率はマイナス10%以上に拡大した。トルコリラ/円の90日MAかい離率を見ると、短期的な「下がり過ぎ」を示すかい離率マイナス10%以上への拡大で下落が一段落するパターン、そしてここで下落が止まらなかった場合は、同かい離率がマイナス30%以上に拡大するといった5~10年に1度あるかどうかといった「大暴落コース」に向かう可能性が高まっていた(図表3参照)。では今回はどうか?
トルコリラ/円は2014年からすでに8年以上もの長期下落トレンドが展開してきた。その主因は、猛烈なインフレ、そしてインフレ対策の基本である利上げに反対し、「インフレ対策は利下げ」といった持論を実践してきたエルドアン大統領の政策と見られてきた。ただし、大統領再選となったものの、選挙中の強烈な経済失政への批判を受けて、さすがに「インフレ対策は利下げ」の持論など、経済政策は見直す可能性が注目されている。
エルドアン政権では、インフレ対策として2020年から2021年にかけて中央銀行が利上げを継続した局面があった。長期下落が続くトルコリラにとって、インフレ対策の利上げという常識的な政策の効果の効果は大きかったと見られた。上述のような2020~2021年にかけてのトルコ利上げ局面では、2014年以降の長期下落トレンドで「超えられない壁」となってきた52週MA(移動平均線)突破含みとなるところまで、トルコリラ/円は反発となった(図表4参照)。
次回のトルコ中央銀行の金融政策会合は6月22日の予定なので、まだ間があるが、例えば臨時会合で利上げを決定するという可能性もあるだろう。いずれにしても、再選したエルドアン政権で、本当に利上げに転換できるのか、そして、そうしたことを受けて、トルコリラ/円の90日MAかい離率がマイナス10%以上への拡大で下落一巡となるか。ここでも止まらなかった場合は、90日MAかい離率がマイナス30%以上へ拡大する「大暴落コース」が再現される可能性もあるだろう。