米ドル/円
米ドル/円は、2022年10月の151円から、2023年1月には127円まで急落した。これを受けて、2022年10月に30%以上に拡大した米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率は、2023年1月には14%程度まで縮小した(図表1、2参照)。
米ドル/円の5年MAかい離率の30%以上の拡大は、経験的には「上がり過ぎ」の限界の可能性を示すもの。その意味では、ほとんど限界圏に達していた「行き過ぎた米ドル高・円安」の是正が本格化したのが、127円までの米ドル/円急反落の1つの側面だったと言えるだろう。そして、そんな米ドル/円は、今週に入り138円程度まで米ドル高・円安に戻してきた。これを受けて、5年MAかい離率も19%程度まで再拡大となった。
同かい離率が30%以上に拡大したのは2022年10月を含めても1980年以降で3回しかなかったが、20%以上に拡大したケースを含めても4回しかない。その意味では、足元で同かい離率が20%程度に拡大していることは、経験的に米ドル高・円安の限界圏に達していた2022年10月ほどではないものの、依然としてかなり米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強い水準にあると言えそうだ。
円の実質実効レート
ところで、円の総合力を示す実質実効レート(日銀データを使用)の5年MAかい離率は、少なくとも1995年以降で見る限りマイナス20%程度が円安の限界の目安となってきた。同かい離率がマイナス20%を大きく超えて拡大したのは2014年末から2015年前半にかけての局面だけだった。ちなみに、米ドル高・円安が151円を記録した2022年10月の同かい離率はマイナス21%と僅かにマイナス20%を超えたものの、翌月以降はすぐにマイナス20%以下に縮小した(図表3参照)。
そんな円の実質実効レートも、基本的には米ドル/円と同様に2022年10月が円安のピークで、2023年1月にかけて比較的大きく円高に戻した。この間の同指数の最大上昇率は73.7→78.9で7%程度だったので、同期間の対米ドルでの円上昇率が最大で15%程度に達したことに比べてかなり差があった(図表4参照)。これは、総合力で見ると対米ドルより円の上昇率が限定的だったことを示しているだろう。
円の実質実効レートの5年MAかい離率は、日銀が公表の最新データである3月分で計算するとマイナス16%程度となり、2022年10月のマイナス21%からは縮小した。ただこの5月にかけて全体的に円安再燃となったことを考えると、同かい離率もマイナス20%に再接近している可能性がありそうだ。
すでに述べたように、同かい離率もマイナス20%は、経験的には円安の限界圏となってきた。その意味では米ドル/円で見る以上に、円の総合力で見た場合、円安の限界圏に近い状況が続いている可能性があるのではないか。