分岐点巡る攻防が続く
図表1は、3月以降の米ドル/円に米2年債利回りを重ねたもの。これを見ると、3月以降、米ドル/円が急落した動きは、米2年債利回りが急低下した動きと重なっていた。その上で、4月に入り米ドル/円が反発に転じたのは、米金利低下が一巡し、反発に転じた動きとある程度重なっていた。
図表2は、もう少し長い期間の米ドル/円のチャートに、今度は日米10年債利回り差を重ねたものだ。これで見ると、途中多少のズレはあったものの、基本的な両者の方向性はほぼ一致してきたと言えるだろう。
以上のように、米ドル/円の行方は、米金利ないし日米金利差次第だったと言っても良いだろう。その米金利はここ数年大きく上昇してきたが、3月に金融システム不安が浮上したことをきっかけに急低下となった。では米金利上昇はもう終わったのか、それともまだ一時的な金利低下に過ぎないのか。これについて、実はテクニカルに見ると重要な分岐点を巡る攻防が続いている可能性がありそうだ。
図表3は、米2年債利回りに52週MA(移動平均線)を重ねたもの。これを見ると、この間の米2年債利回り上昇は、52週MAを上回って推移してきた。その52週MAは、足元で3.8%程度なので、3月以降の米2年債利回り低下により、52週MA割れ寸前まで米2年債利回りは低下したことになる。
過去の米2年債利回りに対する52週MAの役割を見ると、上昇トレンドではサポート、下落トレンドではレジスタンスという関係が基本だった。それを今回に当てはめると、米2年債利回りの上昇トレンドがまだ続いており、3月以降の金利低下はあくまで一時的な動きなら、足元3.8%程度の52週MA前後までがせいぜいといった見通しになる。ただ、すでに上昇トレンドは終わり、低下トレンドに転換したなら、米2年債利回りの反発は52週MAを大きく上回らない程度しか見込めなくなる可能性がある。
このように52週MAを使ったトレンドの判断は、基本的には米金利より米ドル/円の方がより「ダマシ」が少ない。米ドル/円の場合は、サポート、レジスタンスを一時的にブレークする、いわゆる「ダマシ」は最大で5%程度。これを今回の米2年債利回りに当てはめると以下のようになる。
米2年債利回りの52週MAを3.8%とした場合、3月以降の金利低下も上昇トレンドが続く中での一時的な動きに過ぎないなら、最大でも52週MAを5%下回る3.6%程度までの金利低下にとどまるといった見通しになる(週足終値ベース、以下も同じ)。
逆に言えば、3.6%以下へ米2年債利回りが低下するようなら、それは一時的な金利低下ではなく、すでに上昇は終わり低下トレンドへ転換した可能性が高くなる。そうなると、一時的に米2年債利回りが反発しても、52週MAを5%上回るまでがせいぜいなので、4%以上の反発も難しくなる見通しだ。
これまでのところ、米2年債利回りは週足終値ベースで、52週MAを割れるまでには至っていない。先週は一時4.2%以上に反発する場面もあったが、こうしたプライス・アクションは、米2年債利回りは上昇トレンドが続いており、それと逆行する金利低下は一時的な動きに過ぎない可能性を示している。
そもそも米2年債利回りは金融政策を反映する金利であり、その金融政策は次回5月FOMC(米連邦公開市場委員会)でも利上げ継続との見通しとなっていることからすると、米2年債利回り低下も一時的な動きにとどまっているのは当然と考えられる。
ただ今後の米景気の動向などにより、今のところFRB(米連邦準備制度理事会)が否定している早期の利下げへの転換といった見通しが出てくるようなら、米2年債利回りが52週MAを大きく下回る動きに向かう可能性もあるだろう。その場合は、米2年債利回りは低下トレンドへ転換し、反発は限られる見通しとなるため、その影響を受ける米ドル/円も上値は限られ、下落リスクが本格化する可能性が出てきそうだ。
最後に、米10年債利回りと52週MAとの関係も確認してみる。52週MAは足元で3.42%程度(図表4参照)。こちらも考え方は、これまで見てきた米2年債利回りのケースと基本は同じ。金利低下があくまで一時的な動きなら52週MA前後までがせいぜい。逆に、52週MAを大きく下回るようなら、すでに上昇トレンドは終了したので、金利の一時的な反発も限られる見通しになる。