金曜日につぶやきを書いた後に、大きなニュースがふたつ飛び込んできました。ひとつは植田和男さんが次期日銀総裁候補として決まったとのニュース。そしてもうひとつは羽生善治さんが王将戦第4局で藤井五冠に勝って、今回の王将戦の対戦成績を2勝2敗にしたというニュースです。どちらも大ニュースですが、やはり私の専門分野に近い日銀総裁人事についてつぶやきたいと思います。

植田さんは、どの評論家もメディアも、日銀総裁候補のダークホースとしてさえ挙げていなかったとのことですが、よくよく考えられた人選だと私は思います。私は植田さんがまだ東大の助教授で、日銀審議委員をされるよりも随分前から存じ上げています。植田さんは、日本人には本当に数少ないファイナンス(金融)の先生なのです。植田さんの云うことは論理的で理論構造がしっかりしているので、当時(もう30年前から20年前くらいまでの間、東大教授や日銀審議委員の頃です)、海外の大手機関投資家、特に債券に関わる人たちは、植田さんと話したがったものです。

日本の金利、金融政策、そして日本国債のことに関して、植田さんほどマーケットの実際を含めて理解されているアカデミアは、私はいないと思います。そして英語でもきちんと理論立てて説明出来る。これからの日銀が取り組まなければいけないことは「出口戦略」です。この異次元の低金利、国債発行、国債購入、そしてイールドカーブコントロールによるいびつなイールドカーブ。これらを正常化していかねばならない。世界で二番目に大きい国債市場を、正常化に向けて軟着陸させねばならない。それには強くて正しい理論と、マーケットへの説明が肝要です。植田和男さんにはそれが期待されたのでしょう。

未だ確定した訳ではありませんが、私は植田新日銀総裁に、大いに期待したいと思います。