90日MAかい離率で考える米ドル/円
米ドル/円の下落が拡大する中、足元で140円程度の90日MA(移動平均線)を10%程度といった具合に大きく下回ってきた(図表1参照)。経験的に、米ドル/円は90日MAかい離率が±10%前後まで拡大すると当面の天井ないし底値を付けるパターンがあった(図表2参照)。その意味では、急激な米ドル下落が短期的な「行き過ぎ」により一巡する可能性も注目されるだろう。
2000年以降で、米ドル/円の90日MAかい離率が今回のようにマイナス10%前後まで拡大したのは4回あった。その意味では、今回のように米ドル/円が90日MAを10%前後も下回る動きは、4~5年に一度あるかどうかといった短期的な「下がり過ぎ」になっていると言えそうだ。
それにしても、90日MAかい離率がマイナス10%前後まで拡大した4回のケースでは3回が、米ドル下落が一段落すると、安値を更新するまで7ヶ月~1年2ヶ月といった具合に比較的長い時間がかかっていた(図表3参照)。唯一の例外は、いわゆる「リーマン・ショック」後の米ドル暴落局面だった2008年10月24日であり、このケースでは1ヶ月半で米ドルは安値更新となった。
今回と方向は逆だが、米ドル/円が90日MAを10%以上上回ったケースも2000年以降では4回だった。このうち2013年2月5日と2022年4月28日の2回は、米ドル高が一段落となった後、10日~1ヶ月半といった具合に比較的早期に米ドル高値更新となった。ただ、2014年12月5日に米ドル高一段落となった後は、米ドル高値更新までに約半年、そして2016年12月15日に米ドル高一段落となった後は、米ドル高値更新まで約5年もの長い時間がかかった(図表4参照)。
以上から分かるのは、米ドル/円は90日MAかい離率が±10%前後まで拡大すると、当面の天井ないし底値を付ける可能性が高かったということだ。また、2000年以降で、かい離率拡大の最大値は±12%までだった。足元の90日MA140円を仮に12%下回るなら123円という計算になる。その意味では、今回の米ドル安・円高は目先的には120円割れまで至らずにクライマックスを迎える可能性が高いのではないか。
今回米ドル下落が一段落となると、それは少なくとも半年以上更新されない可能性もありそうだ。一方で、例外的に比較的早期に米ドル高安値を更新したのは、米ドル安値更新では2008年10月のリーマン・ショックの米ドル暴落局面、米ドル高値更新では2013年2月のアベノミス円安の初期、さらに2022年4月はまだ記憶に新しい2022年にかけて展開した歴史的円安局面だった。
以上を整理すると、今回の米ドル/円下落が目先一息ついた後も、早期に再燃し120円の大台割れに向かうなら、それはリーマン・ショックやアベノミクス円安、そして2022年かけて展開した歴史的円安に匹敵する記録的なボラティリティが問われるところとなりそうだ。