暗号資産ブローカーのジェネシスや、暗号資産投資信託会社のグレースケール、暗号資産メディアのコインデスクなどを傘下にもつデジタル・カレンシー・グループの経営状況悪化が懸念されている。また、暗号資産銀行として知られるシルバーゲート銀行では取り付け騒ぎが起こり、暗号資産取引所のコインベースやフォビグループなどでは大規模なリストラが実施されるなど、年が明けてからも暗号資産市場では悪いニュースが続いている。
このような中、暗号資産の日次取引高は100億ドルを下回り、2019年3月以来およそ3年10ヶ月ぶりの低水準にまで落ち込んでいる(コインマーケットキャップ参照)。2019年初めといえば、コインチェック事件後の下落相場が底を迎えたタイミングである。投機家が退散してFTXグループ破綻後の下げも終わりに近いと考えたいところだが、2023年前半にはもう一波乱起こりそうな雰囲気だ。
2022年の大失敗を受けて米国では暗号資産規制を強化する動きが加速している。国際決済銀行(BIS)が銀行の暗号資産保有量上限を定めるなど、既存の金融機関を含めた国際ルールの整備も進められている。これらの規制動向は暗号資産市場にとって短期的にはネガティブだろうが、暗号資産が金融市場の枠組みに当てはまることによって、中長期的には幅広い投資家が参入しやすい環境を作るだろう。
また2023年は日本において法定通貨の価値に連動したステーブルコインの取扱いが解禁される。今やステーブルコインは暗号資産市場における逃避資産としての役割だけでなく、取引の基軸通貨としての役割も果たしている。海外に倣って国内でもステーブルコインを利用した様々な金融サービスが立ち上がり、利回りの大きい投資機会を求めて金融市場から暗号資産市場へ資金が流れることも考えられる。
2023年の暗号資産市場は隠れた膿が出切るまで冷え切った相場が継続するかもしれない。しかし、痛みを乗り越えて豊かな土壌が作られようとしている時だからこそ種をまいて新しい春に備えたいものである。ブロックチェーンゲーム、デジタル証券、デジタルIDなど次のブームとなりうるテーマはいくつも存在している。2023年はそれらを見極めながら投資戦略についても考えたい。