2023年の投資先として何が有望か。投資環境を展望すると、年前半はFRBの利上げが続くが、それによって米国景気は一段と減速感が強まり、それを受けて年後半にはFRBは利下げに転じるだろう。そうであれば利上げで売られた資産の巻き戻しが期待される。利上げで売られた資産の代表と言えば、米国のハイテク株に代表されるグロース株であり、海外REITである。チャートはナスダックとFTSE NAREIT Equityインデックスの推移だが、米国10年債利回りときれいに逆相関になっているのが見て取れる。今後、長期金利が低下すれば、グロース株とREITは反発するだろう。

【図表1】ナスダック(青)とFTSE NAREIT Equity(白)インデックスの推移
出所:Bloomberg

米国のハイテク・グロース株にはさらに明るい材料がある。先行してファンダメンタルズが悪化していただけに、いち早く底を打ったようだ。ナスダック総合の12カ月先予想EPSは既にわずかながら上昇に転じている。これに米国長期金利の低下が加われば、出遅れていたナスダック総合の反騰は力強いものになるだろう。 

【図表2】ナスダック総合指数
出所:Bloomberg

REITはバリュエーションの面から極端に割安と考えられる。LaSalle Securitiesの算出によると、足元では保有する純資産(NAV)対比16%のディスカウントで、長期平均から2標準偏差乖離する大幅な割安水準だ。売られ過ぎの域にあり、戻りの余地は大きい。セクター別には当然のようにオフィス系REITの低迷が目立つ。セクター別NAV対比のディスカウント率を見るとオフィスは30%を超えている。今はコロナ禍が残り、リモートワークが普及し米国の大都市ではオフィス需要は低迷しているが、数年先にはオフィスに人が戻るような状況もあり得るだろう。長い目では仕込み時ではないか。

これら、米国のハイテク・グロース株やREITは状況が一変することによるターン・アラウンド、いわば復活に賭ける逆張りだ。FEDは当面利上げを続けるだろうし、果たして年後半に利下げに動くか、まだわからない。FEDの判断は遅れるのが常だ。雇用は典型的な景気の遅行指標だが、近年のコロナ禍による労働市場の構造変化によってなおさら雇用悪化が表面化するのは緩慢になる。したがってそれを見ながら意思決定するFEDが利下げに転じるのも遅れ、2023年中にはないかもしれない。そうなるとこの逆張り戦略は、またも(!)不発となって報われないリスクがある。

そこで順張りも加えよう。2022年のベストパフォーマーのひとつが、インド株だった。インド株の高パフォーマンスはなにも2022年に限らない。ずっと好調なのだ。

インドの人口は2023年に中国を抜いて世界一になる。一方、中国は早ければ2023年から人口減少が始まる。その意味で、2023年はこれまで世界経済をけん引してきた中国と、成長著しいインドの「主役交代」という象徴的な年になると言えるかもしれない(株価のパフォーマンスという意味ではとっくに「主役交代」しているが)。

インド経済の強さはIT産業であるというのは周知の通りだろう。そこに、いよいよ半導体が加わる。インドはすでに鴻海の半導体工場誘致に成功しているが、インド国内大手財閥タタ・グループがインド国内で半導体生産事業に乗り出す。このニュースを報じた日本経済新聞は、「有力財閥の参入により、インドが東南アジアなどに続いて世界の半導体供給網の一角を担う可能性が高まる」と述べている。いまや、米国でも日本でも半導体生産工場の誘致というのは国策だ。その流れにインドも乗ってくる。

インドの成長性はこれまでも市場で認識され、それゆえ株式市場のパフォーマンスも良好であったが、この先もさらに好調さが持続、いやむしろ加速していくのではないか。これに乗っていくのが順張りである。

人口は経済成長のドライバーだ。GDPで世界5位のインドは、25年には4位のドイツ、27年には3位の日本を抜くと見られている。高い経済成長に伴い、これまでの課題であった中間層の薄さも劇的に解消され、中間層世帯は倍以上増えて1億6500万世帯になるとの予測もある。巨大な購買力を持つ経済圏が誕生する可能性を秘めている。

中国で起きたことがインドでも起こるだろう。一度豊かになった中間層は、もう粗悪品には戻れない。日本製の高品質な製品を好むようになる。日本の消費財メーカーにとっての肥沃な市場が出来上がるだろう。インド株そのものだけでなく、インドでビジネスを展開する日本企業も有望な投資対象になるだろう。