上海総合指数、香港ハンセン指数が上昇した理由とは

2022年11月末~12月中旬の中国本土市場・香港市場は上昇となっています。2022年11月28日終値から12月19日終値までの騰落率は、上海総合指数が+0.9%、香港ハンセン指数は+11.9%となっています。

上海総合指数、香港ハンセン指数共に10月末を底として、200日移動平均線まで上昇してきたのですが、きれいに200日移動平均線で上昇が止まり、香港ハンセン指数は200日移動平均線に沿って横ばいに推移し、上海総合指数は12月19日に大きく下がりました。

両指数が200日移動平均線まで上昇してきた要因はいくつかありますが、最も大きな要因はゼロコロナ政策の緩和だと思います。中国では緩やかなゼロコロナ政策の緩和が行われていましたが、抗議活動が発生したことを受けて、次々と大幅な緩和策が発表され、12月7日には国家衛生健康委員会が10項目のゼロコロナ緩和措置を発表。具体的には、大規模なPCR検査は行わないことや施設の出入りに陰性証明を求めないことなどが定められました。

不動産企業への金融支援や内需拡大戦略など、中国当局の政策に期待高まる

ゼロコロナ政策の緩和以外にも、中国の国有銀行数行が一部の民間開発業者に数十億ドルの資金を提供すると明らかにしたことや、不動産企業のエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)規制を緩和するなど、不動産企業への金融支援や不動産市場を支えていく方針が中国当局から発表されたことも株式市場にとって大きなプラス要素となりました。これによって不動産企業の株価が大きく上昇しています。

また、12月14日には国営新華社通信が2035年まで、消費と投資を刺激し、内需の拡大を図る中国当局の2022-35年の内需拡大戦略を伝えました。国外環境が(欧米の高いインフレ率や金融引き締めによって)厳しい状況となっていることを踏まえ、コロナ禍からの回復を進める上で、中国は内需を重要視し、これを引きあげるために財政投資を行うという方針です。これらの政策期待によって、中国株は200日移動平均線まで大きく上昇してきたということが言えるでしょう。

2023年は中国株にとって大きな回復の1年になる

もっとも、香港ハンセン指数は200日移動平均線に頭を抑えられる形で上昇がストップしており、上海総合指数は12月19日に大きく株価が下落しました。

12月19日に上海総合指数が下落した理由は、ゼロコロナ政策の緩和によって、北京などで新型コロナウイルスの感染拡大が進んでおり、経済活動に影響が出る可能性が懸念されたことです。大規模なPCR検査は行われなくなり、無症状感染者数の発表は取りやめられたため、これまでと比較した感染者数の推移はわかりません。

また、ここ最近発表されている有症状感染者数は2000人前後で推移し、むしろ最近発表されている人数は微減傾向にあります。しかし、これまで厳格な行動制限を行ってきた中国では、集団免疫が全く育っていないとの観測や中国国産のワクチンは欧米のワクチンよりも効果が薄いといった見方があり、今後の経済への悪影響を懸念して株価が下がっているわけです。

今後の見通しは、もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大が経済に悪影響を与える可能性は十分あるところですが、2023年は中国株にとって大きな回復の1年になるのではないかと見ています。

基本的に、これから中国で起こることは日本でも起こっている、コロナ規制からの緩和による経済回復だと思います。12月15、16日に行われた、2023年の経済政策方針を決める「中央経済工作会議」でも、2023年も積極的な財政投資と穏健名金融政策を継続することが決まっており、防疫措置についても状況に応じて調整していき、新段階の防疫措置の実施をするとしています。

ゼロコロナ政策の緩和が行われた上で、財政投資の拡大と緩やかであっても、金融緩和の継続が行われるとすると、いずれ中国経済は上向くはずで、それは企業業績にも好影響を与えるものと思います。

まずは目先の新型コロナウイルスの感染者数拡大の問題を乗り越える必要はあると思いますが、最終的に集団免疫が育ってくるなどすれば乗り越えられ、中国経済と中国株は上向いていくことになると期待できると思います。