暗号資産市場の話題は「FTXグループ破綻」の一色だ。メディアがFTX姉妹会社であるアラメダ・リサーチの財務状況に関する情報をリークしてから、FTXグループが破綻申請に至るまではおよそ10日間のできごとだった。状況変化の早さと情報量の多さに、私もまだ事件の全容を掴みきれていない。

これまでの報道を整理すると、FTXはアラメダ・リサーチとの間で資金融通しつつ、自社が発行するFTTトークンの価格を釣り上げていた。それによって会計上の評価額を大きくみせ、新たに集めた資金でさらに自社トークンを買い上げることを繰り返していた。このような自転車操業を続けるなかで、ついには顧客資産にまで手をつけてしまったというわけだ。

FTXグループ破綻の真相解明は米国当局に役割を譲るとして、投資家の関心はこれから市場がどうなるかである。FTXが救済を発表していたレンディング企業ブロックファイをはじめ、取引先の連鎖破綻が懸念されている。また、FTXと関わりの深いソラナ関連プロジェクトの時価総額は軒並み落ち込んでいる。

どこまでネガティブな影響が拡大するかはわからないが、テラショックほどの衝撃はないと考えている。なぜならFTTトークンはテラUSDとは違って市場参加者の間で広く使われているものではないからだ。ソラナ上の分散型金融(DeFi)市場がまるまる崩れるとしても、その時価総額(≒TVL:ネットワーク上の預託資産額)は事件前からDeFi全体の約2%にすぎない。

金融市場への影響も限定的だろう。最近では大手金融機関の暗号資産関連事業への参入が増えているが、それでも暗号資産を自己保有している金融機関はほとんどない。ましてやFTTトークンを担保に資金を貸し出しているところはないだろう。ビットコインを除けば、暗号資産市場はまだまだ金融市場とは切り離されているということだ。

このようにFTXグループ周辺で考えるならば、暗号資産の規制強化が避けられないとはいえ、相場の下げも比較的緩やかになるだろう。しかし、他の暗号資産取引所でFTXグループと同様の問題が発覚した場合はその限りではない。特に自社トークンを発行しながら規制にかかっていないバイナンスやバイビット、クリプトドットコムなどの動向は注視したい。