ボラティリティ急騰のインフレ相場

このところ、CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といった代表的な米インフレ指標の発表を受けて、米ドル/円などもこれまでになかったほど大きく動くケースが続いてきた。その代表はもちろん、11月10日、米10月CPIの対前年同月比上昇率が予想を下回ると、最大で6円以上の米ドル急落となった「CPIショック」だろう。

11月15日、今度は10月PPIの対前年同月比上昇率が予想を下回ると、米ドル/円は最大で3円もの急落となった。特定の経済指標発表直後に、このように一方向へ3円以上といった具合に大きく動くのは、全盛期の米雇用統計相場、または1980~1990年代に日米貿易不均衡問題が大きなテーマになった当時の米貿易収支発表後の相場を彷彿とさせる。裏返せば、それだけ米インフレの行方を目安としてポジションをとる「インフレ・トレード」が急拡大したということではないか(図表1、2参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2022年7月~)
出所:マネックストレーダーFX
【図表2】米インフレ指標発表と米ドル/円の関係(2022年7月~)
※注:黄色は結果が予想以上で米ドル高となったケース、青色は結果が予想以下で米ドル安となったケース
出所:「経済指標カレンダー」などをもとにマネックス証券が作成

「インフレ・トレード」の仕組みは基本的にはシンプルで、主にCPIやPPIといった代表的な米インフレ指標の結果が、予想以上だったら米ドル買い、予想以下だったら米ドル売り。ただその結果、指標発表直後に一方向へ3円以上も動くことが頻繁に繰り返されたということは、「インフレ・トレード」関連のポジションがいかに拡大し、影響力が大きくなっていたかをうかがわせるものだった。

このような「インフレ・トレード」は、7~10月までの4ヶ月ではインフレ指標の結果が予想以上だったのが3回で、インフレに賭けた米ドル買いポジションなどは利益が拡大したと見られる。ところが、11月は、CPI、PPIとも予想以下にとどまり、米ドルは大きく下落した。これにより、インフレに賭けた取り引き、「インフレ・トレード」はかなりの損失が発生した懸念がある。

この数ヶ月世界の金融市場を席巻した「インフレ・トレード」。それが、11月に入り「CPIショック」で痛手を受けた影響は気になるところだ。為替の場合の代表的な「インフレ・トレード」はもちろん米ドル買いだろうから、それが「CPIショック」などで痛手を受けた影響は、米ドル買いポジションの手仕舞いまたは損切りで、米ドルの上値を重くする要因となりそうだ。