3つの指標で「行き過ぎ」リスクをチェック

米ドル高・円安は、先週一時145円寸前までの動きとなった。今回の米ドル高・円安は2021年1月の102円から始まったので、まだ2年も過ぎない中で40円程度もの米ドル高・円安が進んだわけだ。

このように記録的なペースの相場の場合、「行き過ぎ」のリスクについても意識する必要がある。特別分かりやすいきっかけがなくても、「行き過ぎ」の反動から逆方向に大きな動きとなる可能性もあったからだ。そこで今回は、ここまでの急激かつ大幅な米ドル高・円安の「行き過ぎ」リスクについて、いくつかの指標を元に点検してみたい。

まずは、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)かい離率を見てみよう。同かい離率は、先週末時点でプラス27%程度まで拡大した(図表1参照)。1980年以降で、同かい離率がプラス30%以上に拡大したのは2回しかなかったことを考えると、すでにかなり米ドル高・円安の「行き過ぎ」リスクが高くなっていると言えるだろう。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率 (1980年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
ちなみに、同かい離率のピークは、基本的にトレンドの終了と一致していた。その意味では、今回の米ドル高・円安トレンドも、これまでの経験からすると着実に終わりに近付いている可能性がありそうだ。

では、次は短期的な相場の「行き過ぎ」リスクについて確認してみよう。米ドル/円の過去3ヶ月の平均、90日MAからのかい離率を見ると、一時はプラス7%以上に拡大した(図表2参照)。このように同かい離率がプラス10%近くに拡大したのは、米ドル/円が、短期的にもそれなりに「上がり過ぎ」懸念が強くなっていた可能性を示していた。

【図表2】米ドル/円の90日MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

先週、米ドル/円は145円寸前まで上昇したところから、金曜日には一時141円台まで急反落となったが、このような短期的な米ドル「上がり過ぎ」の反動も、米ドル下落を加速させた一因だったと考えられる。

もう1つ、別な指標でも確認してみよう。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表している投機筋の円ポジションは、先週まで「売り越し」再拡大となっていたが、それでも売り越しは6万枚弱にとどまっていた(図表3参照)。経験的には、売り越しが10万枚以上になると、円の「売られ過ぎ」懸念が高くなるので、そういった観点からすると、足元ではまだそれほど円「売られ過ぎ」を懸念するほどではなさそうだ。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション (2015年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成