米ドル安の「必要条件」を確認する

7月の米ドル/円は139円台から一時132円台へ急落となった。ではさらに130円割れへ米ドル下落が本格化するかと言えば、それはまだまだ時期尚早ではないか。

2021年から展開してきた米ドル高・円安は、基本的に米金利上昇と連動してきた(図表1参照)。この関係を前提にすると、米ドルが130円を大きく割り込むためには、米金利のさらなる低下、米2年債利回りなら2.5%割れを目指すことが必要となりそうだ。

【図表1】米ドル/円と米2年債利回り(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米2年債利回りは、基本的に米国の政策金利であるFFレートの影響を受ける。そのFFレートは、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けて、まさに2.5%まで引き上げられた。経験的に、米2年債利回りがFFレートを下回る動きとなるのは、先々のFFレートの低下を先取りする場合、つまり現在のFRB(米連邦準備制度理事会)利上げ局面が終わり、利下げへ転換する可能性が出てきた時ということになる(図表2参照)。

【図表2】米2年債利回りとFFレート(2018年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米利上げの終わり、利下げへの転換は、まだまだ時期尚早の議論ではないか。むしろ、少なくとも足元では次回9月FOMCにかけても利上げは続き、FFレートは3%まで引き上げられるとの見方が一般的だろう。利上げが続く中では、基本的に米2年債利回りはFFレート以上で推移するという経験則からすると、米2年債利回りは目先的には下がるより、3%以上へ上昇するといった見通しが普通ではないか。

米GDP成長率は、1~3月期のマイナス1.6%に続き、4~6月期の速報値もマイナス0.9%と2四半期連続マイナス成長となった。ただ、1~3月期の数字は、その前の2021年10~12月期がプラス6.9%と大きく伸びたことの反動の影響が大きかったとの受け止め方が基本だろう。そういったことも合わせると、2四半期連続マイナス成長とは言っても、今の段階で「リセッション」との評価は大袈裟ではないか。

FRBは、デュアルマンデート、つまり2つの政策的使命を担っている。1つは物価の安定、そしてもう1つは雇用の最大化。これまでFRBがインフレ対策に積極的な取り組みができたのは、もう1つの政策課題である雇用の拡大が続いていたことも大きかっただろう。逆に言えば、雇用の悪化が顕著になってきた時には、インフレ対策の利上げの見直し、さらに利下げに転換する可能性も出てくるだろうが、まだその兆候を確認するに至っていない。

以上のように、先週FOMC後の米ドル/円急落を横目に、ユーロ/米ドルなどは基本的には横這いで、米ドル安に目立った動きがなかったのも分かりやすいのではないか(図表3参照)。FOMC後の米ドル急落は、基本的には対円での「特殊な現象」であり、全体的にはまだ米ドル安本格化に向かう段階ではないということだろう。

【図表3】ユーロ/米ドルと独米2年債利回り差(2022年5月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成