日本株が強い理由」というタイトルでレポートを書いたのは6月10日。日経平均が3月につけた高値を抜いた翌日だ。そこをピークに欧米株の急落に巻き込まれる格好で、日本株も下値を探りにいったが、ようやく売り一巡感で出てきた。この間、日米欧とはまったく異なる動きでV字回復を見せたのが中国・上海総合指数だ。ロックダウン解除で景況感が改善しているのが背景にある。年初来リターンを見ると、TOPIXは上海総合にほぼ追いつかれたが、ぎりぎりでまだトップを保っている。

グラフ1:TOPIX(黒)S&P500(緑)上海総合(赤)DAX(紫)
出所:Bloomberg

この株価の差は、各国の景況感の違いによるものだ。モーサテ景気先行指数は日本、中国、米国、欧州という順である。

グラフ2
出所:テレビ東京モーニングサテライト

グラフ3はMarkitのコンポジットPMIを日米欧で見たものだが、すでにピークアウトして減速に向かっている欧米と対照的に日本は右肩上がりを続けている。

グラフ3:Markit PMIコンポジット 日本(青)米国(黄)欧州(赤)
出所:Bloomberg

実際に日本の景況感はこれからますます改善するだろう。

全国の主要企業100社を対象にした朝日新聞のアンケートで、いまの国内景気について「拡大」とみる企業が61社にのぼった。新型コロナ感染の縮小や行動制限の解除によって経済活動の再開が進み、個人消費が上向いているとの見方が多い。

ここに県民割がさらに追い風になるだろう。大阪府では1日の利用再開からおよそ半月で約13万人が宿泊の予約をした。東京都では予約開始日に完売したホテルもあるという。政府は7月中に「県民割」を全国を対象とする制度に切り替える方針を示す。

日本の景気について明るいニュースは多い。例えばアルバイトの需要が回復している。リクルートが発表した三大都市圏(首都圏、東海、関西)の5月のアルバイト・パート募集時平均時給は前年同月比31円(2.8%)高い1123円だった。5カ月ぶりに過去最高を更新した。

新型コロナウイルス感染対策の行動制限がなくなったほか、訪日外国人の受け入れ再開などを見据えた飲食店を中心にサービス各社が採用に力を入れた結果だ。

アルバイトの時給もいい話だが、もっと景気にインパクトのあるのは、大手企業のボーナスだ。経団連が発表した大手企業の2022年夏季賞与(ボーナス)の1次集計結果によれば16業種105社の平均妥結額は92万9259円で、21年夏と比べ13.81%増えた。上昇幅は1981年以降で最大で、4年ぶりのプラスに転じた。

さらに先日の日経新聞は設備投資の増加を報じた。日本経済新聞社がまとめた2022年度の設備投資動向調査で、全産業の計画額は前年度実績比25%増える見通しだという。伸び率は1973年度以来の高水準で投資額は07年度に次ぎ過去2番目に多い。

これらの背景にあるのは、コロナ禍からの企業業績の回復だ。その利益を企業は設備投資や従業員のボーナスに振り向けている。日本経済にいい循環が生まれつつある兆しと言える。