みなさん、こんにちは。日経平均はようやく底堅い流れとなってきました。

金利上昇やエネルギーコスト上昇の影響はかなり織り込み済みとなった一方、史上最高益連発の企業業績や円安メリットの再確認、コロナ禍で実施されていた種々の制限の緩和などポジティブ要因が注目され始めたというところでしょうか。

円安については前回のコラムでメリットを忘れずに、と解説しましたが、早くもそのような流れになったのかもしれません。希望的観測となりますが、日経平均株価は当面の底を確認したのではないかと思っています。

国内外で起こるサイバー攻撃事例

さて、今回は「サイバーセキュリティ」を採り上げてみましょう。皆様も会社や自宅で使用するPCではセキュリティソフトをお使いになっている方がほとんどだと推察します。しかしそういった対策が浸透しているにもかかわらず、マルウェア感染など何かしらのトラブルに遭遇する例が少なくないということもまた事実と言えるでしょう。

最近では取引先部品メーカーがサイバー攻撃を受けたために、トヨタが国内全工場の操業を一旦停止したという出来事もありました。2021年には米国の大手石油パイプライン会社がサイバー攻撃を受け、ハッカー集団に身代金を支払ったという事例も発生しています。万全と思われているそういった大企業においてさえも、サイバー攻撃への防御は鉄壁ではないということが白日の下に晒されたと言えるでしょう。

さらに、直近では経済的な問題に留まらず、安全保障分野でもサイバー攻撃が大きな脅威となっていることが知られてきました。ロシアによるウクライナ侵攻においては、企業や政府機関のWEBサイトやサーバをダウンさせるような攻撃事例があったと報告されています。これまではなんとなく遠い世界の話のようであったサイバー攻撃ですが、実はかなり身近にその脅威が迫ってきていると言えるのです。

残念ながら、こういったサイバー攻撃に対して半未来的に有効な対策はありません。システムにはどこかしかに穴(あるいは穴になりかねない綻び)が存在している可能性が高く、それがDX化によってさらにその潜在リスクは高まっている状況にあります。対処療法的な封じ込めを行っても、それを凌駕する攻撃手段はいくらでも考えられるというのが現実なのです。

DXの加速により、サイバーセキュリティの重要性が高まる

そして、攻撃する側のメリットも大きいものがあります。これは物理的な攻撃ではないため、うまく組み合わせれば大したコストをかけることなく、非常に多数の標的を同時かつ何度も攻撃することも可能です。

さらに、DX化が進む現代において、システムの麻痺が実態経済や安全保障に与える影響は計り知れないものがあります。費用対効果という観点で見ると、非常に効率のよい攻撃でもあるのです。攻撃と防御はまさにいたちごっこという状況にあり、日を追ってサイバーセキュリティ対策の重要性は増してきていると言えるのです。

当然、そういった構造的な需要拡大は株式市場からも注目されることになります。種々のトラブル事例が明るみになるにしたがって、サイバーセキュリティ関連銘柄は概してよいパフォーマンスを演じています。

既に相場のテーマとして注目されていることを考えれば、今からサイバーセキュリティ関連銘柄に関心を寄せるのはやや遅いと言う方もいるかもしれません。しかし、いたちごっこが続く限り、そして攻撃側にとって「効率のよい攻撃」である限り、セキュリティ関連需要は増えることはあっても減ることはない、と考えるのが自然だと考えます。

投資に入るタイミングはもちろんしっかりと見極める必要があるものの、構造的な需要拡大のメリットは長い目でみれば企業価値の拡大に繋がる可能性が大きいと私は考えています。

投資を始める前に確認すべきチェックポイント

ただし、だからといって深く考えずに投資行動に出ることは慎みたいところです。行動前に確認しておきたいのは、バリュエーションです。

如何に需要拡大期待ができるとはいえ、随分と先の期待までも株価が織り込んでしまっていれば(=バリュエーションがかなり高くなってしまっていれば)、その後の株価の上値余地は限られます。

2021年にサイバーセキュリティ関連銘柄がリモート需要取り込み期待を背景に急伸した反動から大きく売り込まれたのはその典型例でしょう。需要拡大シナリオが既に見えているだけに、売買のタイミングは非常に重要となるのです。

銘柄選択も重要です。サイバーセキュリティ関連銘柄は多くが法人向け取引を主体としているため、一般的な知名度は限定的です。なかなか個人投資家では見分けがつかないというのが実情でしょう。

そういった場合は、売上の伸び率を比較検討してみてください。年々の変化は会社四季報などを見ればすぐに把握できますが、少し手間はかかるものの、四半期ごとの売上推移を確認することも重要です。

この場合は、開示されている四半期決算情報(これらはほとんどが四半期累計決算)から直前期の数字を差し引いて算出できる四半期単体の売上に注目します。前の四半期に対してどの程度の売上成長ピッチにあるのかに着目するのです。

顧客獲得が好調であれば、その成長ピッチがさらに加速しているはずです。こういった見分け方はサイバーセキュリティに限らず、成長企業の銘柄選択にも有効です。是非、活用いただければと思います。