介護費用の準備や負担に関しては親子で意識の相違が大きい上に、話し合いをしていないという親子も多いようです。介護費用のかかり方は人によっても異なりますが、まとまった額の初期費用(一時金)に加え、継続的な費用が必要になる場合が多いです。センシティブで、なかなか話しにくい話題ですが、親子で費用負担の意識を共有しておかないと、いざ介護が必要となって困ることもあります。親子で介護費用の相場を知るとともに、一緒に準備を進めていきましょう。

親子間で差がある介護に関する意識

実際に、介護について親子間でどれだけの意識の差があるでしょうか。NTTファイナンス株式会社が実施した「子世代から見た親の終活に関する意識調査2021(※)」を見てみましょう。「親に実施して欲しい終活」(図表1)では、介護について4割前後の子世代が親に対して「やってほしい」と考えているにも関わらず、「実際に実施している」親世代の割合が低いことが分かります。

【図表1】
※親子世代でそれぞれWEBアンケートによる調査   
親世代調査(2021年11月実施)対象:50歳~80歳の男女、有効回答数:1,089名(男性544名、女性545名)、項目ごとに複数回答可   
子世代調査(2021年12月実施)対象:35歳~59歳の男女、有効回答数:1,093名(男性547名、女性546名)、項目ごとに複数回答可
出所:「NTTファイナンス株式会社終活に関する実態調査2021」をもとに筆者作成

次に、「親の介護について話し合いはされていますか?」という項目を見てみましょう。調査対象の約3分の2の親子が介護に関して話し合いも決めごともしていないことが分かります。

【図表2】
出所:「NTTファイナンス株式会社終活に関する実態調査2021」をもとに筆者作成

この他にも「親の介護について気になることはあるか?」という項目では、最も多くの人が気にしているのは「いつから介護が必要になるか」でした。

以上の実態調査を見て感じるのは、親子で介護に関する話し合いができていないのが、意識のギャップとして現れているのではないかということです。

直接口に出して言わなくても、将来の親の介護が必要になった時のことを思い、様々な心配をしている子世代も少なくありません。子世代がどのようなことを心配しているのかを知り、親世代のほうから話し合いを切り出すのもいいかもしれませんね。

介護にかかる費用

介護費用の準備状況を懸念している方の中には、「介護には多額の費用がかかりそうで心配」という方もいらっしゃるでしょう。そこで大切なのが、親子共に介護費用として必要な金額やお金のかかり方の目安を知っておくことです。金額やお金のかかり方が分かれば事前に対策ができ、費用面での不安を軽減できるかもしれません。

生命保険文化センターが公表している「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)の合計額は平均74万円となっています。その後の介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、月々の費用(月々支払っている(支払っていた)費用)をみると、1ヶ月当たり平均で8万3000円かかっています。介護期間は平均61.1ヶ月(5年1ヶ月)となっています。

上記の調査結果から計算(74万円+8.3万円×61.1ヶ月)すると、約580万円程度必要だと考えられます。

なお、介護費用は増加傾向にあります。将来どうなるか予想しにくいものですが、老後の生活資金を取り崩さなくてもよいように、介護用の資金を確保しておきたいところです。

介護の希望によって更に資金が必要な場合も

上記では、在宅介護と施設介護(老人ホーム等)を含めた平均額をご紹介しましたが、一般的には施設介護は在宅介護より多くの費用が必要です。ただし、介護施設は大きく公営施設と民営施設に分けられ、それぞれいくつかの種類があります。施設によって価格帯も異なります。ここでは、代表的な施設の価格帯の目安をお伝えします。

特別養護老人ホーム

費用目安は月額5万~15万円です。特別な事情がある場合を除き、要介護度3~5の高齢者しか利用できません。

グループホーム

費用目安は月額12万~18万円です。認知症の高齢者を対象とした地域密着型の施設で、1つの共同生活住居に5~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送ります。

サービス付き高齢者向け住宅

施設によって幅があり、月額15万~50万円が目安です。一般的に敷金(保証金)が必要で、施設によっては数百万~数千万円というところもあります。介護サービスを受けると別途費用がかかります。

介護付き有料老人ホーム

月額15万~40万円が目安です。一般的に入居時一時金が必要です。一時金の額は施設によって数百万~数千万円というところもあります。高額な入居一時金がかかる替わりに月額費用が安めに設定されているところもあり、施設によって様々です。

介護が必要になってから、どこでどのように過ごしたいか、という希望によって費用負担は大きく変わります。介護の必要度に合った施設を選ぶことが前提にありますが、前述した金額にプラスαの資金の準備が必要になる可能性も考えて、親子で希望の確認をできると良いでしょう。

今回の記事では、介護に関する意識について親子間で大きなギャップがあることをお伝えしました。介護の話題は親子共に切り出しにくいものですが、介護には資金が必要になることもあり、いざ介護が必要となった時にお互いに困る場合もあります。親子でしっかりと話し合い、事前に準備しておくと良いでしょう。

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