米ドル/円相場の120円予想が増えてきています。
米国のインフレ率上昇で米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年3月にも利上げに踏切り、その後も継続して利上げを実施するとの観測が市場のコンセンサスとなっています。その一方、日本のインフレ率はまだまだ目標の2%に届かないことから日銀が現在の緩和政策の継続のスタンスを示しています。
このような「日米金利差の拡大」が米ドル/円相場の上昇に繋がるというのが円安米ドル高予想の背景となっています。
では、すでに利上げを実施しているニュージーランドと日本の金利差拡大を材料にNZドル/円が上昇しないのは何故でしょうか?ニュージーランドの中央銀行RBNZは2021年10月、11月と2会合連続で利上げを実施しており、政策金利を0.75%に引き上げています。
米国の政策金利は2022年3月に利上げが見込まれているとはいえ、現在はまだ0.25%です。ニュージーランドの政策金利のほうが高く、金利差だけで言えばNZドル/円に魅力があるように見えます。
金利差だけが為替を動かす材料ではない
為替の変動要因は様々です。貿易収支もその1つ。例えばエネルギーが採掘できない国は原油を輸入する他ありませんが、原油価格が上がれば輸入コストが膨らみ赤字が拡大します。
貿易に関わる取引は後に反対売買が行われることのない実需であるため、貿易赤字、あるいは黒字の拡大は為替市場においては根雪のようにトレンドを形成していきます。
一方で輸出が好調であれば問題ないのですが、輸出と輸入の収支を相殺し黒字が大きければ通貨高要因、赤字が大きければ通貨安要因となっていきます。ニュージーランドはこのところ輸出を上回る輸入の急増で貿易赤字傾向が続いており、これがNZドル安の一因となっているものと見られます。
また、市場にリスクが存在せず、好景気環境にあれば投資家はリスクテイクに動くため「金利差」が投資の材料として注目される傾向が強まるのですが、現在はどうでしょうか。
世界は新型コロナウイルスを完全に抑え込めず、人流がコロナ禍以前に戻らない中でインフレばかりが加速しています。インフレ率の上昇は金利上昇に繋がるため、一見通貨の買い材料にも見えます。しかしながら、利上げで景気を冷やしてしまうリスクにも繋がりかねず、米国株がこれを警戒して上値が重くなってきていることも投資家マインドを冷やしています。
NZドルが買われない背景とは
ニュージーランドの第3四半期のGDP成長率は▼3.7%とマイナス成長でした。デルタ株の感染拡大による外出規制が響いたと考えられます。
ニュージーランドは2020年3月から自国民も対象とした海外からの入国を原則禁止しており、2年弱にわたる厳格措置に国民の不満が募っていることから、2022年2月末から措置を緩和することを決めています。制限緩和はこれからであるため、第4四半期のGDPも低成長になるとみられます。
一方で、1月27日に発表されたニュージーランドの第4四半期の消費者物価指数(CPI)は前年比5.9%上昇し、約30年ぶりの高水準を記録しました。経済成長がない中での物価上昇は好ましくありません。NZドルが買われない背景には、景気に悪影響となるリスクがある中で、インフレ抑制のための利上げに動いたことへの懸念があるのです。
NZドルが上昇するためには、まずは米国株式市場の安定が条件となります。世界の景気を先行する米国株が下落基調である以上、それよりもリスクが高いとされる資産が持続的に買われる可能性は小さいと言えます。米国が利上げしても米国経済は後退しないことが確認できればまず米国株が上昇トレンドに回帰し、それから高金利通貨にも資金が流れてくるでしょう。