円、ユーロ、豪ドルの「売り余力」

27日には一時111円を超えるなど、米ドル高・円安が広がってきた。では、さらに円安をもたらすほど円売りが続く可能性はあるかについて、今回は考えてみる。

為替市場においてもリードオフ役と位置付けられるヘッジファンドなどの取引を反映しているとされるのがCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の為替ポジションだ。これを見ると、円のポジションは、先週の段階で6万枚程度の売り越しといった具合に、年初来の最高の売り越しに近いところでの推移となっていた(図表1参照)。さすがに、年初来の円安値に近づく中で、円売りも「限界」に近付いているということかといえば、それは違うだろう。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジションその1 (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

より長い時間軸で見ると、かつて円売り越しは10万枚以上に拡大したこともあった。一方で、円買い超しのピークは7万枚前後だった(図表2参照)。このような、円売り越しと買い越しのピークの差は、やはり円が世界で屈指の低金利通貨ということの影響ではないか。低金利通貨は、売るリスクをとりやすく、逆に買うリスクは基本的に限られるだろう。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジションその2 (2015年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

対米ドルで年初来の円安値に接近する中でも、まだ円の「売られ過ぎ」懸念は必ずしも強くはなさそうだ。その観点で言えば、円売りのリスクテークがさらに拡大する中で、円安が一段と進む可能性は十分ありそうだ。

ほかの通貨についても見てみよう。ユーロは足元で小幅ながらまだ買い越し(図表3参照)。ユーロは米ドルに対して年初来の安値に近い水準での推移となっているが、これはそれまでの買い越しを縮小する動きだった。この先、米金融緩和政策の転換で、米金利上昇に伴い米ドル買いが続くなら、ユーロの売り余力はまだまだありそうだ。一方、豪ドルはすでに過去最高の売り越しとなっている(図表4参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】CFTC統計の投機筋の豪ドル・ポジション (2012年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上のように見ると、それぞれの通貨のポジションにはかなりの差がありそうだ。今後、米金融緩和の政策転換でさらに米ドル買いが続くとして、このような米ドル以外の通貨のポジションの差がどのように影響するかも、気になるところではある。