本稿を執筆しているのは23日の午前11時である。レポートがアップされるのは24日になるから、今晩のNY市場の状況を反映していないことをお断りしておく。それでも、今週を振り返ると、株式相場にとってよいガス抜きの機会だったと総括できるだろう。

中国恒大集団の問題で波乱の幕開けとなった今週の株式相場だが、最大の注目イベントであったFOMCが無難な結果となったことで、米国株は大きく反発した。中国恒大が23日期日の人民元建て社債の利払いを実施すると発表したことも安心感を誘った。休場明けとなった香港市場で恒大の株価は15%高で寄り付き、一時30%高まで上昇する場面があった。11時現在、20%ほどの上昇で推移している。

S&P500 日足ローソク足チャート
出所:Bloomberg

S&P500は支持線と見られた50日移動平均(黄色のライン)を下回り、そこから反発できなかったため、CTAなどアルゴ・トレードが売りを膨らませた面があると週間マーケット展望で述べた。先日の米国株の大幅安はテクニカル的な要因が大きかった。しかし、最終的な攻防ラインである75日移動平均(緑色のライン)では、下げ止まり、反発に転じている。75日線は3月の下落局面でもサポートラインとなった。

一目均衡表を見ると雲の中にとどまっている。底割れは回避された状況だ。

S&P500 一目均衡表
出所:Bloomberg

FOMCが無難な結果となったと述べたが、次回11月会合でのテーパリング決定示唆に加え、利上げ時期が22年に前倒しされることを示唆するドットチャートが示された。それでも市場は「想定内」と捉えたのだ。22年に利上げ前倒し観測については、ドットチャートの中央値では「22年に一回」となるが、これもテクニカル的なもので、人数としては22年も据え置きを見込む人が9人いる。1回以上の利上げを見込むひとが9人だから半々である。

ドットチャート
出所:Bloomberg

より重要なことはパウエル議長が「資産購入縮小のタイミングとペースは、利上げ開始のタイミングに関して直接のシグナルを送ることを意図しない」と明言したことだ。テーパリングは来年半ばに終えるかもしれないが、次の利上げ決定はまったく切り離して考えるということだ。当然と言えば当然だ。テーパリングは緩和の縮小であって、まだ緩和は継続する。対して利上げというのは緩和から引き締めへの転換なので意味合いがまるで違う。と、いっても(いつになるかわからないが)次の利上げも2015年の利上げ同様、引き締めという意味合いよりも金利正常化への一歩という意味合いが大きいだろう。次の利上げが決定されるころには、コロナの完全終息に近い状況が見えているだろう。そういう中で、強い経済の下での利上げであれば市場は問題なく乗り切れるだろう。

さて、今週の下げは日本株についても、ちょうどよい一服となった。今動いている海外市場の日経平均先物から逆算すれば、仮に今日、日本が休場でなければ日経平均は3万円の大台を回復していたであろう。いずれにせよ、日経平均の3万円回復、そして再び高値更新は時間の問題である。

国内ではいよいよ自民党総裁選が白熱してきた。FNNの取材に僕はこう答えた。

「河野さんはこれまでの世論調査で1番人気だったのですが、年金改革についてはちょっと失点だったんじゃないかなと思います。岸田さんが切り返していましたが、“年金を税財源で”というのはそもそも民主党が言い始めたことですよね。しかも民主党は政権を取ったものの実現できず、自民党は反対していた。なぜこのタイミングで河野さんが言い始めたのかわかりませんが、消費税を財源にするならやはり具体的な数字をセットにして議論しないといけません。」

これがどう響くかは、まだわからないが、河野さんの勢いに微妙な変化を感じる。

総裁選の行方は混とんとしている。おそらく1回目の投票で764票の過半数を獲る候補はいないと見られている。本日、日経が報じた党所属国会議員の動向調査によれば、議員票は岸田文雄氏と河野太郎氏を高市早苗氏が追い上げ、3氏が競り合う状況だ。仮に岸田・河野で決選投票になれば現時点で岸田氏は議員票で若干リードだが予断を許さない。しかし、そうなれば1回目で高市氏に入れた議員が岸田氏へ回る可能性がある。岸田・河野で決選投票となれば、岸田氏有利か。

一方、高市氏が決選投票に残り、相手が河野氏なら、同様に岸田氏票の一部が高市氏に回るだろう(あくまで一部にとどまると思われる)。可能性はそれほど高くないが、日本初の女性首相誕生となれば、なにかと世界の中で周回遅れだった日本を見る目が変わるだろう。仮に高市氏が今回の総裁選に敗れても善戦には違いない。これだけでも日本の古い政治体質が変化していると世界へのアピールになるのではないか。そして次か、その次に女性首相誕生の可能性を示すことにつながる。ジェンダー劣等国、日本が変わるいいチャンスだ。株式相場にとっても、無論、良いことである。