カナダ、メキシコ、そしてオセアニア
9日、ECB(欧州中銀)が、PEPP (パンデミック緊急購入プログラム)といった金融緩和策の「微調整」を決めるなど、「コロナ・ショック」後の金融緩和を見直す動きが広がってきた。「世界一の経済大国」、米国の金融緩和縮小、「テーパリング」開始が注目されているが、資源国、新興国では「テーパリング」、利上げといった金融緩和の政策転換が、米国に先行する形で広がっている。
まず、先進国の中で最も早く、金融緩和の縮小、「テーパリング」に動いたのはカナダ。その後、NZは7月に、そして豪州も今週、「テーパリング」に動いた(図表参照)。
以上は、いわゆる先進国の動き。一方、新興国となると、たとえばメキシコは、6月、8月とすでに2回、政策金利の引き上げに動いた。こんなふうに、先進国、新興国で、「コロナ・ショック」後の金融緩和の見直しが、最近にかけて広がっていることがわかるだろう。背景には、物価上昇、つまりインフレ懸念がありそうだ。
こういった動きに一息入れるところとなったのが、いわゆるコロナ変異種、デルタ株の影響だろう。今週行われた豪州、カナダの金融政策会合で、前者は上述のようにテーパリングを決めたものの、さらなるテーパリングは、当初の見込みより遅くなるとの見通しになった。そして、カナダでは、3度目の緩和縮小が見送られた。
ただ、今のところは、そんな金融緩和見直しのペンディングも、長く続くということではなく、たとえばカナダでは10月にもテーパリング第3弾に踏み切る見通しであり、またNZは10月に利上げを行うと予想されている。
こういった中で、ECB、欧州中銀は9日、PEPPの減速を決めた。これについて、その後の記者会見で、ラガルドECB総裁は、これは微調整に過ぎず、金融緩和の段階的な縮小、「テーパリング」を意図するものではないとの見解を示した。
少しわかりにくい印象は否めないところではあるが、ECBでは、APP(資産購入プログラム)という緩和策も行っており、基本的にはこの縮小がテーパリングに位置付けられそうで、こちらは今のところFRB(米連邦準備制度理事会)より遅くなると見られている。
それにしても、徐々に金融緩和の見直しが広がってきていることがわかるだろう。「世界一の経済大国」、米国の金融政策の転換は、他国以上に慎重になるとはいえ、着実にその必要性が高まっている可能性はありそうだ。